2021年11月25日 09:44

排気量アップで加速は暴力的 SUBARU 新型WRX S4に乗ってみた

2022年発売予定のSUBARU 新型『WRX S4』のプロトタイプ試乗会に参加した。WRX S4は『レヴォーグ』と車台を共有する4WD、4ドアセダンのスポーツカーだ。2020年にレヴォーグがフルモデルチェンジしたのに合わせ、WRX S4も第2世代へと進化した。

ゴルフボールのディンプルと同じ効果を狙ったフェンダー表面

新型は2.4Lターボエンジンやフルインナーフレーム構造などの新機軸が盛り込まれ、速さを維持しつつ、一気に洗練度を増した。試乗会が開かれた千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで新型S4の大胆なスタイリングを目の当たりにし、ド肝を抜かれた。前後のホイールアーチがブラックの樹脂で縁取りされているではないか。車輪を大きく見せたいSUVがよくやる手法だが、セダンでは珍しい。スポーツカーという括りで考えても稀だ。大昔のスポーツカー(とそれにインスパイアされた族車)には太いタイヤを収めるためにオーバーフェンダーを装着する例が見られたが、WRX S4のそれはデザインのためのものだ。

当初ギョッとしたが、取材中に止まっている車両や走行している車両を眺めているとだんだん見慣れてきて、帰る頃にはこの挑戦はうまくいくのではないかと思えてきた。フェンダーモール以外のボディ下部もぐるりと樹脂で縁取られており、クルマの下のほうは全部黒。独特の迫力がある。とはいえ突如採用されたアイデアというわけではなく、東京モーターショー2019に出展された同社のコンセプトカー『ヴィジヴ パフォーマンス コンセプト』にも見られた手法だ。ちなみにこの樹脂製フェンダーモールの表面には、エアロダイナミクス向上のため細かな凹凸がある。なんでもゴルフボールのディンプルと同じ効果を狙った凹凸だそうだ。

排気量アップでもパワー数値はダウン しかし・・・

エンジンは従来のEJ20型(2L水平対向ターボ)からFA24型(2.4L水平対向ターボ)にスワップされた。従来のEJ20型はスバルが長らくハイパフォーマンスカーに搭載してきた伝統のハイチューンユニットだが、燃費面、エミッション面で継続使用が厳しくなってきたのだろう。新たにボアアップによって排気量を約400cc増やし、チューニングのカリカリ度をやや落としたエンジンが採用された。なおこのエンジンはレヴォーグの“速い方”のエンジンとしても搭載される。

EJ20型が最高出力300ps/5600rpm、最大トルク400Nm/2000-4800rpmだったのに対し、FA24型は同275ps/5600rpm、同375Nm/2000-4800rpmと、最高出力、最大トルクともに数値はダウンした。だが実際に走らせてみると、高い負荷が求められるサーキットであっても、パワーダウンしたことを感じることはなかった。

その理由は排気量アップを活かし、ピーク値に到達する前の過渡領域で十分なトルクを発揮していることと、CVTの改良によって、ギアレシオカバレッジが拡大し、低い領域はローギアード化し、加速力を向上させているからだ。ギアレシオカバレッジは高い領域にも拡大されていて、巡航時の回転を下げ、燃費と静粛性を向上させたという。

かなり暴力的な加速

スバルのCVTにおなじみのI(インテリジェント=事実上のノーマル)、S(スポーティ)、S#(よりスポーティ)の3モードを選べるSI-ドライブは、SとS#ではあえて8段の固定ギア変速を模した制御となり(Iでも全開加速時はそうなる)、S#ではアップダウン、特にアップの変速スピードが上がった。SとS#ではダウン時のブリッピング制御も入る。

この改良となったCVTの、特にS#によって、新型WRX S4はサーキットを走らせるに相応しい、スポーツドライビングに没頭できるスポーツカーに仕上がった。全開加速時、レッドゾーン付近までエンジン回転が上昇しては「ダン」という心地よい区切りとともにギアアップし、再びエンジン回転が上昇する。これを繰り返しながらクルマは途切れなく、勢いよく加速していく。4WDとハイグリップタイヤの組み合わせによってエンジンのパワーは効率よく路面に伝わり、結果としてかなり暴力的な加速を味わうことができる。減速時にはブリッピングしながらリズミカルにギアダウンしてくれる。北米仕様車には6MTも設定されるそうだが、特に羨ましいとは思わない。MTは速さのためだけにあるわけではないので、ここは人によるだろうが。

無段階に変速し、燃費効率が高いのがCVTの存在意義ではあるが、本来スポーツドライビングには向かない。ただしスバルは全モデルがCVTのため、スポーティモデルにもCVTを使わざるを得ない。水平対向エンジン縦置きというユニークなレイアウトのため、よそからATを調達するのが難しいからだ。ならばスポーツ走行可能なCVTを開発してしまえというわけで、開発陣は今回もCVTを進化させた。

現行型レヴォーグ同様フルインナーフレーム構造を採用 快適性はさらに向上へ

低中速コーナーが短い直線で結ばれた袖ヶ浦フォレストレースウェイは、低、中速トルクに厚みを感じる2.4Lエンジン、進化したCVT、そして伝統のVTD式4WDというパッケージングの新型WRX S4が真価を発揮しやすいコースといえる。同業者の多くは持ち時間いっぱいを使って全開走行を繰り返していた。皆コースインする前には、まずは一般道を想定しながらゆっくり走って徐々に…と考えるのだが、速く走らせたくなる仕掛けが満載のクルマなので、だいたいインラップのうちに全開にしてしまうのだ。

私もそういう風に走らせてしまったうちのひとりだが、それでも持ち時間を使い果たす前に辛うじてこれが仕事であることを思い出し、スピードを落としてわざと縁石を踏んだり荒れた路面を選んで走らせてみたりした。新世代プラットフォーム「SGP(スバル グローバル プラットフォーム)」が採用されて以降のスバル車は、それより古い世代とは別次元の高いボディ剛性を誇り、快適性とハンドリングの両方を向上させた。そして現行型レヴォーグからはフルインナーフレーム構造が採用され、さらに快適性が向上した。当然新型WRX S4にもこの構造が採用された。

フルインナーフレーム構造とは、ざっくり言うとボディ骨格全体の溶接を済ませてから外板を取り付ける製法のこと。従来はいくつかに分割された骨格のそれぞれに外板が取り付けられてから溶接されていた。従来の製法だと、ボディに取り付けられた外板が邪魔で、理想的な骨格の溶接ができない部分があったという。同時に構造用接着剤の使用箇所も大幅に増えた。

エレクトロニクスやソフトウェア頼みではなく、骨格や機械の精度、メカニカルを駆使

こうして生まれた高剛性ボディに加え、路面追従性を向上させるべくサスペンションをロングストローク化し(フロント5%、リア20%)、コーナリング時に自然にノーズがインを向く前傾したロール軸とし、ロールを抑制するためにリアスタビライザーを車体に直付けするなど、足まわりにも細かく手が入れられた。また従来は電動パワステはドライバーのステアリング操作軸を直接アシストしていたが、新型では別の軸でアシストすることで、フリクションを低減し、ステアリングフィールを向上させた。この効果は実感しやすく、ダイレクトな操作感を味わうことができた。

文字にすると、こうしたメカニカルな改良の一つひとつは地味で理屈っぽいが、すべてがうまく調和した状態で盛り込まれるとドライバーが被る恩恵は実に大きい。一般道で試乗していないので断定できないが、従来、速さのために多少犠牲になっていた快適性が、新型WRX S4にはきちんと盛り込まれていた。冒頭に洗練されたと書いたのはこの部分を指す。

内燃機関のみで動くスポーツカーに新しさはない。けれど“速く、思い通りに走らせられること”というスポーツカーの価値は昔からまったく変わらない。エレクトロニクスやソフトウェア頼みではなく、骨格や機械の精度、メカニカルな仕組みを駆使して魅力的なクルマをつくろうとするスバルのようなメーカーがあるのは、クルマ好きにとって救いだ。

■5つ星評価

パッケージング:★★★

インテリア/居住性:★★★

パワーソース:★★★★★

フットワーク:★★★★★

オススメ度:★★★★

塩見智|AJAJ会員/モータージャーナリスト

1972年生まれ。岡山県出身。地方紙記者、自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。文章はたとえツッコミ多め、自虐的表現多め。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味ゴルフ。日本カーオブザイヤー選考委員。

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