2022年05月27日 11:56

【日産 サクラ】は戦略価格ではない:軽EVは儲からないは過去のこと

パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2022」で、一般公開日は多くの来場者を迎え大盛況だった。日産自動車のブースは『アリア』と『サクラ』が1台ずつの展示で、決して大きくないスペースだが、業界関係者に溢れていた。

「人とくるまのテクノロジー展」略して「ヒトクル」は、自動車技術に特化した展示会なので、来場者は新型車やコンセプトカーより、アクスルやサスペンション、ECUやインパネ、電装品のほうが気になる。説明員とのやりとりも実際の生産技術や量産にかかわる専門的な内容ばかりだ。

日産ブースでは、e-FORCE、e-Power関連の技術に加え、アリア、サクラに採用されたフラットディスプレイなどが注目だ。サクラに投入された技術の詳細は、パネル展示だが、ブースにはコンシューマ向けイベントでは出てくることがないエンジニアや開発スタッフが説明員として常駐しているため、かなり突っ込んだ質問が飛び交っていた。

記者が気になったのは、やはりサクラに投入された新技術や開発・設計のポイントだ。まず、EVの心臓ともいえるバッテリー。NMC型リチウムイオンバッテリーは、日産が初代『リーフ』から手掛けてきたバッテリーで信頼性と製造技術の蓄積から選択された。製造はエンビジョンAESC。『デイズ』のフレームを流用したため、よくあるフラットスクエアなバッテリーパックではなく凹凸がある形状とした。デイズのフロアトンネルや燃料タンク部分を有効に活用するため3種類の高さのスタックモジュールで構成されている。セルの並べ方と積み重ね方によって高さを調整できるユニバーサルスタックという方式だ。

じつは、デイズの開発段階でEV化を念頭に入れていたとのことで、固定や補強メンバーはリーフと同じ骨格構造になっている。。フロア下部には4本のクロスメンバーが追加され、重さを支えるためリアメンバーには斜めの補強部材も追加されている。

サクラのバッテリーパックは、エアコンの冷媒を利用したクーリングシステムが搭載されている。バッテリーの温度管理機構はリーフには搭載されいない(日本仕様)が、軽規格であるサクラにはそれがある。この理由は、DC急速充電性能を高めるためだ。バッテリー容量が小さいサクラは、急速充電で十分な速さ・効率が期待できるが、半面、高速走行直後の充電などで温度上昇しやすくなる。航続距離を180kmと割り切ったサクラとはいえ、ちょっとした旅行ニーズや遠出での経路充電での性能を確保する狙いがある。

単純計算では、高速道路の50kW急速充電器なら30分でサクラの20kWhのバッテリーのフル充電が可能(実際には常に最大50kWがでるわけではないし、バッテリー保護のため急速充電では100%前に制限がかかる。サクラのスペックはSOC 30%から30分で80%まで充電可能となっている)だ。

バッテリーの温度管理がされるなら、走行パターンなどあまり気にせず、なくなってきたらDC急速充電による継ぎ足しを繰り返すことができる。EVに慣れたドライバーなら往復で200km、300kmの遠出は苦にならないだろう。そのための温度管理機構を奢ったわけだ。なお、サクラにはPTCヒーターも搭載されるので暖房はエアコンとヒーターを使い分けてバッテリー消費を調整することもできる。

次にモーターとその制御についても聞いた。インバーター一体型のモーターは軽自動車用にコンパクトにまとめられた。この量産技術はiMiEVの三菱自動車と日産アライアンスの賜物といえる。モーターマウントはデイズ(ガソリンエンジン)と同じペンチュラム式(釣り下げ式)マウントをモーターの慣性軸直上に設置。マウントはエンジン(モーター)ルームを横断するユニットメンバーに固定される。モーター下部はクロスメンバーにつながるトルクロッドで固定。この構造がモーターの応答性と静粛性を高め振動も抑える。

このモーターはアリアや『ノート』の4WD車のリアモーターと同じものが使われている。最大トルクこそ軽自動車の自主規制である47kWに抑えられているが、最大トルクは195Nmと2Lスポーツカー並みのトルクだ。本来出力はもっと上げられるはずだが、かえって制御が難しいのではないかと質問してみたところ、軽自動車ということを考えると出力はこれで十分だそうだ。また、このモーターは永久磁石誘導方式のため、高回転になるほど逆起電力が働いてしまう。出力や高回転を極めるより、トルク重視のチューニングで使いやすさとストレスフリーを狙ったとのことだ。

高速道路、急こう配など軽自動車が苦手とされる状況でも、サクラはそれを感じさせないように設計された。

最後にインパネだが、デザインはアリアと同じ2段構成のフラットディスプレイが採用されている。アリアは11、12インチ、サクラは7、8インチと微妙に小さくなっている。つまりデザインコンセプトは同じだが、ディスプレイは専用ということだ。バッテリーの温度管理やサクラ専用のパーツやデザインなどがあるので、200万円越えとはいえ戦略価格なのかと質問したところ、バッテリーコストはバランスさせているので「売れば売るほど赤字になる」ということはないという。

技術者に改めて聞くと、軽自動車のEVでよく言われる課題や問題は、日産サクラや三菱『eKクロスEV』では過去のものなっているようだ。

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