【日産 サクラ】は戦略価格ではない:軽EVは儲からないは過去のこと
パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2022」で、一般公開日は多くの来場者を迎え大盛況だった。日産自動車のブースは『アリア』と『サクラ』が1台ずつの展示で、決して大きくないスペースだが、業界関係者に溢れていた。
「人とくるまのテクノロジー展」略して「ヒトクル」は、自動車技術に特化した展示会なので、来場者は新型車やコンセプトカーより、アクスルやサスペンション、ECUやインパネ、電装品のほうが気になる。説明員とのやりとりも実際の生産技術や量産にかかわる専門的な内容ばかりだ。
日産ブースでは、e-FORCE、e-Power関連の技術に加え、アリア、サクラに採用されたフラットディスプレイなどが注目だ。サクラに投入された技術の詳細は、パネル展示だが、ブースにはコンシューマ向けイベントでは出てくることがないエンジニアや開発スタッフが説明員として常駐しているため、かなり突っ込んだ質問が飛び交っていた。
記者が気になったのは、やはりサクラに投入された新技術や開発・設計のポイントだ。まず、EVの心臓ともいえるバッテリー。NMC型リチウムイオンバッテリーは、日産が初代『リーフ』から手掛けてきたバッテリーで信頼性と製造技術の蓄積から選択された。製造はエンビジョンAESC。『デイズ』のフレームを流用したため、よくあるフラットスクエアなバッテリーパックではなく凹凸がある形状とした。デイズのフロアトンネルや燃料タンク部分を有効に活用するため3種類の高さのスタックモジュールで構成されている。セルの並べ方と積み重ね方によって高さを調整できるユニバーサルスタックという方式だ。
じつは、デイズの開発段階でEV化を念頭に入れていたとのことで、固定や補強メンバーはリーフと同じ骨格構造になっている。。フロア下部には4本のクロスメンバーが追加され、重さを支えるためリアメンバーには斜めの補強部材も追加されている。
サクラのバッテリーパックは、エアコンの冷媒を利用したクーリングシステムが搭載されている。バッテリーの温度管理機構はリーフには搭載されいない(日本仕様)が、軽規格であるサクラにはそれがある。この理由は、DC急速充電性能を高めるためだ。バッテリー容量が小さいサクラは、急速充電で十分な速さ・効率が期待できるが、半面、高速走行直後の充電などで温度上昇しやすくなる。航続距離を180kmと割り切ったサクラとはいえ、ちょっとした旅行ニーズや遠出での経路充電での性能を確保する狙いがある。
単純計算では、高速道路の50kW急速充電器なら30分でサクラの20kWhのバッテリーのフル充電が可能(実際には常に最大50kWがでるわけではないし、バッテリー保護のため急速充電では100%前に制限がかかる。サクラのスペックはSOC 30%から30分で80%まで充電可能となっている)だ。
バッテリーの温度管理がされるなら、走行パターンなどあまり気にせず、なくなってきたらDC急速充電による継ぎ足しを繰り返すことができる。EVに慣れたドライバーなら往復で200km、300kmの遠出は苦にならないだろう。そのための温度管理機構を奢ったわけだ。なお、サクラにはPTCヒーターも搭載されるので暖房はエアコンとヒーターを使い分けてバッテリー消費を調整することもできる。
次にモーターとその制御についても聞いた。インバーター一体型のモーターは軽自動車用にコンパクトにまとめられた。この量産技術はiMiEVの三菱自動車と日産アライアンスの賜物といえる。モーターマウントはデイズ(ガソリンエンジン)と同じペンチュラム式(釣り下げ式)マウントをモーターの慣性軸直上に設置。マウントはエンジン(モーター)ルームを横断するユニットメンバーに固定される。モーター下部はクロスメンバーにつながるトルクロッドで固定。この構造がモーターの応答性と静粛性を高め振動も抑える。
このモーターはアリアや『ノート』の4WD車のリアモーターと同じものが使われている。最大トルクこそ軽自動車の自主規制である47kWに抑えられているが、最大トルクは195Nmと2Lスポーツカー並みのトルクだ。本来出力はもっと上げられるはずだが、かえって制御が難しいのではないかと質問してみたところ、軽自動車ということを考えると出力はこれで十分だそうだ。また、このモーターは永久磁石誘導方式のため、高回転になるほど逆起電力が働いてしまう。出力や高回転を極めるより、トルク重視のチューニングで使いやすさとストレスフリーを狙ったとのことだ。
高速道路、急こう配など軽自動車が苦手とされる状況でも、サクラはそれを感じさせないように設計された。
最後にインパネだが、デザインはアリアと同じ2段構成のフラットディスプレイが採用されている。アリアは11、12インチ、サクラは7、8インチと微妙に小さくなっている。つまりデザインコンセプトは同じだが、ディスプレイは専用ということだ。バッテリーの温度管理やサクラ専用のパーツやデザインなどがあるので、200万円越えとはいえ戦略価格なのかと質問したところ、バッテリーコストはバランスさせているので「売れば売るほど赤字になる」ということはないという。
技術者に改めて聞くと、軽自動車のEVでよく言われる課題や問題は、日産サクラや三菱『eKクロスEV』では過去のものなっているようだ。
掲載に関する免責事項について
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
価格.comで最新価格・クチコミをチェック!
日産(nissan)の自動車(本体) ニュース
-
インフィニティのSUVクーペ、VCターボ搭載…『QX55』に米2023年型
日産自動車の海外向け高級車ブランドのインフィニティは6月28日、SUVクーペ『QX55』…
2022.07.05 09:11 -
日産の欧州主力SUV、『キャシュカイ』に e-POWER
日産自動車の欧州部門は6月27日、新型『キャシュカイ』(Nissan Qashqai)に「e-POW…
2022.07.04 06:30 -
インフィニティの新SUVクーペ『QX55』、快適性向上…2023年型は今夏米国発売へ
日産自動車の海外向け高級車ブランドのインフィニティは6月28日、SUVクーペ『QX55』…
2022.07.04 06:01
このほかの自動車(本体) ニュース
メーカーサイト
価格.comでチェック
自動車・バイクニュースランキング
-
小型トラックベースのワイルド系キャンピングカー、モーターキャンプEXPOで初公開
自動車(本体)2022.07.01 06:42 -
ケーブルメンテナンスでも音が変わる![音を良くする“ひと手間”]
カーオーディオ2022.07.04 09:30 -
【ダイハツ ハイゼットカーゴ 新型】日本を支える「ハイゼット」がもっと頼れる相棒に[詳細写真]
自動車(本体)2022.07.04 09:25 -
スバル インプレッサ に2023年型---全車AWD
自動車(本体)2022.06.30 08:40 -
開いたり閉じたりできる折りたたみ傘式サンシェード、2,180円
その他のカー用品2022.06.29 14:17
総合ニュースランキング
-
【7月のトミカ】ルーフを開閉できる「カロ・ビー」トミカなど
ミニカー2022.07.03 07:00 -
「加熱式タバコ」2022年上半期、IQOS・Ploom・gloの新登場デバイスまとめ
電子タバコ・加熱式タバコ2022.07.02 07:00 -
小型トラックベースのワイルド系キャンピングカー、モーターキャンプEXPOで初公開
自動車(本体)2022.07.01 06:42 -
設置工事が不要、持ち運びにも適した「スポットエアコン」2022年最新モデルまとめ
エアコン・クーラー2022.06.27 10:50 -
オーディオプレーヤー機能搭載の防水・骨伝導イヤホン「OpenSwim」に新色ブルー
デジタルオーディオプレーヤー(DAP)2022.07.04 07:00
読んでおきたい まとめ記事
-
Vlog撮影ミラーレスカメラ「ニコン Z 30」が登場、割り切って小型・軽量を実現
-
【7月のトミカ】ルーフを開閉できる「カロ・ビー」トミカなど
-
「加熱式タバコ」2022年上半期、IQOS・Ploom・gloの新登場デバイスまとめ
-
進化する「サーキュレーター」最新6モデルまとめ、空間除菌や風量自動調整も
-
設置工事が不要、持ち運びにも適した「スポットエアコン」2022年最新モデルまとめ
-
自分専用のコンパクトな「セカンド冷蔵/冷凍庫」まとめ、テレワーク部屋や寝室にも
-
注目の新製品ニュースをチェック!(6月27日〜7月1日)
-
【7月の値下げ】ドコモ3万円割引やソフトバンク5千円還元、「Ploom X」50%オフ
自動車
カー用品
- カーナビ
- 車用ホイール
- 車用エンジンオイル
- カーオーディオ接続キット・配線
- その他のカー用品
- カーオーディオ
- 車載モニター
- カースピーカー
- 車載カメラ
- ドライブレコーダー
- 車載用空気清浄機
- その他車載機器
- シガーソケットUSB・充電器
- タイヤ
- ETC車載器