2022年08月15日 09:20

どこが変わったかわからない? 新型 ムーヴキャンバスの登場で考えるキープコンセプトの意義

ここだけの話だが、過日ダイハツ『ムーヴキャンバス』(以下、キャンバス)の実車を取材で見る機会があり、その“キープコンセプトぶり”に内心、驚かされた。訊けば「継承と進化」が開発の狙いだそうで、そのうちの“継承”の部分が、誰にでもひと目見てキャンバスとわかるエクステリアデザインとして、あの形になったらしい。

新型では「ストライプ」と呼ぶシリーズが初代のイメージを継承していて、特徴だった、昔懐かしいVWのバスのような2トーンのボディの塗り分けや色使いまで、新型はものの見事に初代のイメージを踏襲というか、再現している。

果たして見分けがつくかどうか…?

商品企画担当者の話によれば、初代のキャンバスは、あの姿カタチの人気が高かったのだそうで、車名は知らなくても街中で見かけて「あのカワイイクルマは何?」と販売店にやってくるユーザーもいたほどという。そういうユーザーのことを大事に考えたのが、今回のモデルチェンジという訳だ。

ちなみに規格の決められた軽自動車ということもあり、実際のボディサイズは新旧でほとんど同じ(ホイールベースが5mm違うだけで、全長×全幅×全高の3サイズは新旧で不変)。この原稿執筆時点では、まだ新旧の実車を屋外で並べて見てはいないが、果たして見分けがつくかどうかは今の段階では未知数。街中ですれ違った場合も、判別できるかどうか、今のところちょっと自信がない。

クルマの世界に限らずプロダクト全般で、キープコンセプトなモデルチェンジはよく見られる。たとえばSONYのコンパクトデジカメ、「サイバーショット RX100」は、2012年に初号機が発売されてから最新モデルは「VII型」だが、外観はほとんど変えずにスペックを上げて現役だ。AppleのiPhone、MacBookなども何世代かに渡って外観デザインは変えずに中身を進化させる手法をとっている。iPhoneの場合、筐体のサイズが変わらなければケースの使い回しができ、それがユーザーフレンドリーだったり…といったメリットもあるにはあるが…。

ひと目でわかるスタイリングとキャラクター

翻ってクルマの世界でも、古今東西、考えてみればキープコンセプトの事例は決して少なくはない。直近ではチンクことフィアット『500』とそのEVモデルとして登場した『500e』は好例だ。もともと500は往年のモデルをモチーフに誕生したクルマだったが、EVでも、あくまでもガソリン車と同じ、ひと目で500とわかるスタイリング、キャラクターを活かして登場してきた点は興味深い。「フィアットにとっても500は大事にしたいクルマなのだなぁ」ということがよくわかる。

そういえば『MINI』もそう。BMWから2001年に登場したMINIが今のモデルで3世代目にあたるが、最初のR50以来、ずっと誰が見てもミニとわかるルックスを貫いている。もっといえば、1959年にアレック・イシゴニスが生み出したオリジナルの“BMCミニ(クラシックミニ)”なくしては今のMINIはなかった訳で、大きく捉えるなら、今のMINIはクラシックミニのキープコンセプトでもある。

ほかに、あのポルシェ『911』も1963年に発表された「901」から最新の「992」に至るまで、中身、スペックは格段の進化を遂げつつつも、これはもキープコンセプト以外の何物でもないといったクルマ。昨年最新の“8型”が日本市場にお目見えしたVW『ゴルフ』も、1974年に登場した初代のFF・2BOXスタイルを今でも貫いている。弟分の『ポロ』も、このところキープコンセプト路線で、ひと目でポロだとわかるルックスを続けている。

人気を博した日本車たちにも

日本車でも例は多いが、今、パッと思い浮かぶのは、1990年に登場したP10『プリメーラ』とその次の2代目P11、1983年に登場したホンダの『バラードスポーツCR?X』とその2代目『CR?X』や『プレリュード』(1982年の2代目と1987年の3代目)、トヨタ『ソアラ』の初代と2代目(1981年、1986年)、驚異的な販売台数を誇った頃の『マークII』(1984年のGX71と1988年のGX81)など。いずれも時流に乗って人気を博したモデルたちの次の世代にキープコンセプトが採り入れられていたことに改めて気づく。

言葉使いだけでいうと、キープコンセプトは“焼き直し” “二番煎じ”と意味のうえで紙一重。けれどクルマで言えば、ネタ元の魅力、存在感があったからこそ、コンセプトをあえて変えずに受け継ぐことで、そのクルマの価値、世界観をそのまま保とうとしようとするものだ。冒頭で触れた新型キャンバスでは、すでにオンエアが始まった柴犬が登場したりするTVCMも、ストーリーこそ先代とは違え、気負わない日常のシーンを切り取って、その中にあるキャンバスをホノボノとしたタッチで描いているところは“前作”と共通する。

「(存在感を)変えないために変えた」のは、現行マツダ『ロードスター』の開発コンセプトだが、キャンバスは「変えないことで世界観を守ることにした」クルマということなのだろう。

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