EV補助金は“ガマン料”か、“ごほうび”か? 入金された110万円を見て考える【テスラ モデルY 買いました 15】
テスラ『モデルY』が発売されたと同時にとっさにポチッてしまった一編集者である筆者。日々モデルYに乗ってEVライフを満喫している。そんな筆者にやっと補助金が入ったという。そこで考えたこととはいったい何だったのだろうか?
◆補助金が入った!
昨年2022年9月22日に納車したボクのモデルYだが、納車と同時に一般社団法人次世代自動車復興センターが主導しているいわゆる「CEV補助金」と東京都が主導している「クール・ネット東京 EV・PHV・FCV助成金」を申し込んだ。それが今年になってやっと入金したので、これまでのテスラライフと補助金について感じたことを共有したい。
入金はCEV補助金が2023年1月22日で65万円、東京都のものが1月31日で45万円だ。申請から約4か月である。もともとそのくらいはかかると思っていたので驚きはない。何の連絡もなく“ただ待つだけ”というのも、テスラ購入で慣れていたので、その心持ちは学んでいたつもりだ。感情としては、ひとこと「安心した」というのが正直な気持ちだ。
クルマの購入価格としては110万円安くテスラを手に入れたわけということになる。たしかに喜びはあるし、当初から計算に入れていたので、迷いなく受け取れるわけではあるが、この補助金、どのように考えればいいのだろうか? 日本を走る90%以上のガソリン車を購入したのであれば補助金は出ない。しかしEVを購入すれば大金がいただけるわけである。
たしかに政府や自治体がEVの普及促進のために行っている事業と言うことは理解できる。しかし逆を言えば補助金を出さないと割高なEVを買わない人々が多いという現実があるのも事実である。日々モデルYを快適に利用しているボクとしては、デメリットには目を瞑ってはいるが、正直どうなんだろうか。ふと冷静に考えてみる。補助金はだれも買ってくれないEVを買ってくれた“ごほうび”なのだろうか?
◆補助金は我慢料か、ごほうびか?
補助金を出してまで普及させたいのは、日本がCO2削減の世界的潮流に同調し「2050年カーボンニュートラル」という目標の実現を目指しているからだということは理解できる。しかし今回は賛否両論ある「環境に優しい」という議論は横におく。では補助金をもらって、ユーザーがEVで得られるものは何だろうか? 安いクルマは数多くあるので「クルマが安く手に入れられる」というわけではない。昨年、EVの軽自動車が発売されたので、EVが安く手に入れられるということはあるだろう。
とはいえ、普通の軽自動車を買えば安いうえに燃費も良いので、あえてEVを買う理由があるとすれば、やはりガソリンより経済的と言われる電気という動力源だろうか。ガソリン車とEVの決定的な違いは、その動力源を自宅で補充ができるか否かである。もちろん自宅充電ができないEVユーザーは多数いるが、EV軽自動車は自宅充電を基本にし、1日の走行距離が約100km程度のユーザーを想定しているらしい。
実はボクもその想定ユーザーのなかに入る。だから日常使いだけを考えるとEV軽自動車で事足りるのだが、そこはまぁ、その他もろもろの考えもあってモデルYに乗っている。
そういったEV環境のなか、我々は補助金をどうとらえればいいのだろうか? 税金を使うからには国の意図は単に個々人に得してもらおうということでないことは明らかだ。では何だろうか? EVライフを送っているボクは、現実的に以下に挙げるデメリットというか、ストレスを抱えている。
それもやはり充電環境だ。自宅充電だけであれば、それは基本的に長旅を考慮しないという話になる。いやいやそんなことはない、だからこそ各地にCHAdeMO急速充電があり、テスラにはスーパーチャージャー(SC)が用意されている、との反論があるだろう。しかしながら日本全国のガソリンスタンド数は2万8475か所(経済産業省調べ。2022年3月31日現在)。かたや充電スタンド数は、GoGoEVのサイトによるとCHAdeMOが8303基、普通充電器が1万3638基、テスラのSCが246基である(2023年2月13日現在)。合計すると2万2187基となるが充電場所の数ではないことに注意したい。ガソリンスタンドは全国津々浦々にあり、充電スタンドがそうでないことはみなさんもご存じのとおりだ。
しかも一度の充電に急速充電ですら30分かかるし、それで満充電になるかと言うとそうはならない。日産サクラなどは200Vの普通充電で充電できる最大6kWhという容量ではなく3kWhに制限されている。また、CHAdeMO急速充電の場合も30kWより高出力な充電器であっても最大充電電力が30kWに制限されているのでそれ以上の速度では充電できない。
加えてバッテリーは満充電に近づくと充電速度が落ちるという特性があるので、そもそも急速充電で100%満充電しようという考えがそぐわないのである。これはテスラのSCでも同じだ。だから「ガソリン満タン!」なんてことができないのである。出先では常に80〜90%運用を心掛けなければならない。
これらのことは些細なようで実はそうでもない。常にアタマの中に入れておかなければならないことで、それなりのストレスになっているのだ。そう考えるとEVを使って「ふらりと旅に出る」ことは考えられない。事前に“経路充電”と言われる旅の途中での充電や“目的地充電”と言われる宿泊先などでの充電を“計画”しなければならない。決して“ふらりと”ドライブ旅行はできないのである。
これはEVの最大かつ唯一の欠点だ。“唯一”とはいえクルマの使い方としてどうなのか、という疑問はさておき「長旅はしない」と言う方ならむしろおすすめなのがEVである。というわけでその他不便な点を挙げようと思ったのだが続かない…。テスラでは故障したときの修理費が高いようだが、国産のEVであればそんな心配もないだろう。車両保険にも加入しているボクは、まだ故障や事故は未体験なので、それがデメリットなのかどうかはわからない。
◆デメリットを上回るメリットなのか!?
さて、そこで改めて冷静に考えてみたのだが、それ以外すべてがメリットとしか感じない。自宅では100%充電できるということもメリットだが、その他のメリットとしては、まず、アイドリングという概念がないので、出発する前に暖機運転の必要もなく、ガソリン臭がしない。テスラでは“プレコンディショニング”という機能で、スマートフォンアプリから事前に車内の空調を整え、バッテリーも出発に適した温度にしてくれる。
アイドリングがないので、駐車場に停めた車内で気兼ねなくエンタメを楽しんだり、仕事を進めたりすることができる。そのために空調を整える“キャンプモード”というモードまで用意されている。
また、エンジンがないのでエンジン音がしない。そのぶん走行中のロードノイズが耳障りのこともあるが音楽をかけていれば気にならないし、むしろアクセルを踏み込んだときにエンジン音がしないことが快適だ。以前、独スポーツカーに乗っていたときにそのエンジン音に惚れ込んで車内で音楽をかけないでいたボクがいたのに、歳を取ったのか、自身のおもしろい変化でもある。
アクセルを踏んだときの加速がリニアに延びていくのは以前紹介したとおり。だからこそ運転自体が楽しくなる。モデルYでは、床下に搭載されたバッテリーの重量でカーブ走行中も安定している。アクセル同様にハンドルを切った感覚そのままで曲がることができる。
SNSは過去のぶんまで検索できてしまうので、そのクルマの進化が見えにくい。昔のテスラは車体がずれていたり、雨漏りしたりで散々なクルマだったようだが、少なくともボクのモデルYにそんな不具合はない。
以上のようなことを勘案すると、ボクにとって補助金はごほうびというよりも充電環境に対する“我慢料”なんだと思う。補助金は最低4年間はそのクルマに乗り続けなけないと返還しなければならない。4年後のより進んだストレスレスなEVライフを期待したい。
田代真人
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。
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