2013年12月10日 12:00

【ハイエース開発主査に聞く】伝説のテストドライバーとの関係

新型『ハイエース』開発における苦労話はつきないが、ハイエースならではの大変な作業としては、数多くのバリエーションでマイチェン部分のテストを繰り返したため、膨大なテスト時間を費やしたことだ、と包原開発主査は言う。

◆世界で200を超える膨大な型式

包原氏(以下敬称略):ハイエースはボディとエンジンの組み合わせだけでもバリエーションは多いのですが、さらに保冷車や救急車などの特装車も加えると国内だけでも型式は100を超えています。世界中では230種類にも達するので、そのすべてにマッチングさせる作業は大変でした。さらにシートの組み合わせとかオプションのバリエーションを含めると億を超えてしまうんです。生産ラインに仕様の車体コードを送るために電算処理するシステムが、もう限界だったので今回はバージョンアップして対応しています。今回のマイチェンで型式は減ったのですが、バリエーションはむしろ増えました。

トヨタでさえも、これほど幅広い使われ方をするクルマは他にないそうだ。バリエーションの多さに起因する作業は、すべての仕様に無理がないか確認するだけではない。ワイドをマイクロバスとして使う国では、車両総重量は3.3トンにもなると言う。高規格救急車もそれに近い重量だが、ボディや足回りなどは他のハイエースと共通、つまりハイエースの基本的な強度や耐久性はそのレベルまで追求しているのである。

包原:今考えるとスポーツカーの方が、開発は取り組みやすかったですね。かつて手がけた80スープラのマイナーチェンジでは、今よりかなり自由にやらせてもらいましたから。それこそボディに補強を加えたり、ヤマハのダンパーREASを採用して構造も変えたりしました。さすがに上司からは「お前は毎年クルマを作り替えるのか!」と言われました。

◆スポーツカー開発のノウハウが息づく新たなハイエース

その後『アルテッツァ』、レクサス『IS』、『CT』を手がけ、どれも走りにこだわった開発を続けた。

今回のハイエースのマイチェンについても、担当エンジニアたちの当初の姿勢は、足回りについてはバネまでは換えなくてもいいのでは、という流れだったが、包原氏が開発主査となったのち、状況は一変したそうだ。かつてレクサスのISやCTを一緒に開発したエンジニアたちは、包原氏のこだわりぶりを理解しており、即座にハイエースについても足回りのチューニングを見直すことになったのだ。

◆伝説のテストドライバーの薫陶

そんな包原氏の走りへのこだわりを追求する姿勢は、ある人物に大きく影響を受けたと言う。

包原:モータースポーツが好きで、クルマでもオートバイでも走ることが好きなのです。それと80スープラの頃から成瀬さんには公私共にお世話になっていました。直接開発に関わっていない車種でも、テストしてもらって意見をもらったことも多かったですね。

ご存知の方も多いと思うが成瀬さんとは、トヨタ開発ドライバー約300名の中でも特に精鋭をあつめたトップガンと呼ばれるチームを率いた、マスター・テストドライバー成瀬弘氏のことでである。3年前に開発中の事故で惜しくも亡くなられたが、氏のクルマづくりにおける精神は、包原氏にも受け継がれていたのだ。

包原:成瀬さんの助手席に乗って感じたのは「なんてキレイに走るんだろう」ということでした。そして自分もキレイに走りたい、キレイに走るクルマに仕上げたいと、思いました。そこからキレイに、気持ちよく走るためには、走りのバランスにこだわっていきたいと、考えるようになったんです。それはクルマ全体のバランスまで取ることにつながっていきましたね。

◆ハイエースが青春を彩る

さらには包原氏自身、ハイエースには思い入れがあった。若かりし頃、サーキットにオートバイを運ぶためのトランスポーターとしてハイエースに乗っていた時代があったのだ。

包原:最初はライトエース、そしてタウンエース、ハイエースと乗り換えていきました。あの頃の私の世代は「いつかはハイエース」という感覚でしたね。

そう、包原氏にとって、ハイエースは青春のクルマでもあった。趣味だけでなく、生活に関するものまで凝り性である包原氏。しかも思い出のクルマを手がけるとなれば、商用車であっても一際のこだわりが込められることになるのは、当然のことだったのだ。

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