「マクラーレンDNAの軌跡」トークショー…オートモビルカウンシル2019
オートモビルカウンシル2019にマクラーレンがブースを構えた。展示車両は『MP4-12Cクーペ』と『720Sスパイダー』の2台。その前で、“マクラーレンDNAの軌跡”と題したトークショーが開催された。
トークショーはオートモビルカウンシル事務局共同代表加藤哲也氏(以下敬称略)とマクラーレンオートモーティブ日本支社代表正本嘉宏氏(以下敬称略)とで行われ、これまで加藤氏が乗ったマクラーレンの印象などとともに、そこから導き出されたマクラーレンの印象などが語られた。
◆フォーミュラ1とカーボンコンポジット
正本:マクラーレンオートモーティブは他のメーカーと比べるとまだ歴史が浅い会社で、2009年にオートモーティブとして会社を立ち上げて10年目になりました。
そこから遡ると1990年代に3シーターの『F1ロードカー』を作りまして、さらに原点に遡るとブルース・マクラーレンというこのブランドの創始者が、1963年に自分たちでレーシングコンストラクターとしてのクルマを作り始め、1966年からフォーミュラ1で活躍しています。そういう意味では、実は非常に長い歴史を持ったブランドでもあります。
特にその象徴となるのが1981年の『MP4/1』です。
加藤:カーボンコンポジットを使ったモノコックを採用した、歴史的にも非常に重要なモデルですし、その後、今のフォーミュラ1を見ればわかるように、素材はカーボンモノコックがモノポリーになり、その次に続く新しいシャシーが出てこない状況です。その先例となったのが、いかにもマクラーレンのDNAらしいと思います。
正本:そうですね。カーボンモノコックがマクラーレンとしてのひとつの特徴となっていました。当時、フォーミュラ1に新しいモノコックを導入したことについて、どうお感じになりましたか。
加藤:これは本当にエポックメイキングな事実だと思いましたし、当然のようにシャシーは硬くて剛性があって軽いということは、特にコンマ1秒あるいは1/100秒を争うようなところではタイムだけが価値です。それを奪っていくためにはまさに理想の素材ですから、カーボンモノコックが登場したことに驚きを覚え、同時にこれは安全性の部分の向上にも大きく寄与すると思いました。
実際にカーボンモノコックが実用化されてから、他にも色々な安全性を高めるようなファクターもありましたが、アクシデント時にレースやクオリファイ、プラクティスで亡くなることがなくなりました。そういった部分でも画期的でした。
性能と安全性を両立しているカーボンコンポジットの登場は、100年後にフォーミュラ1の歴史を振り返った時に必ず出てくるようなトピックなのです。
◆笑顔でサーキットを攻められるMP4-12C
正本:マクラーレンはカーボンコンポジットを生産車全てに搭載している唯一のメーカーとして、2011年からMP4-12Cクーペから生産を開始しました。これ以降全ての生産車でカーボンモノコックを使っています。
実際に2011年にMP4-12Cクーペを試乗されていると思いますが、その印象はいかがでしたか。
加藤:本当に素晴らしいクルマでした。マクラーレンではそれ以前にF1ロードカーにも乗ったことがあります。ゴードン・マーレイが製図板を用いながら、ここは何グラム削れなど、非常に理想主義的な設計を突き詰めたようなクルマで、BMW12気筒エンジンを搭載していました。まさに男のクルマでクラッチワークはすごく難しく、ステアリングもノンパワーで非常に重い。しかしフィールとしてはすごく良い、生き生きとしたダイレクトなフィーリングでした。パフォーマンスもすごかったですし、これもカーボンモノコックを使っていました。
そこからブランクがあり、2010年にMP4 12Cクーペが登場しました。F1が当時1億円したクルマであったのに対し、今回は少量なりとはいえ量産モデルでしたから非常に期待もしましたし、その一方でどんなクルマが出てくるのだろうという不安みたいなものもありました。
サーキットで“エクスペリメンタル・プロトタイプ”というクルマに乗せてもらったのですが、コースインした瞬間から笑顔になってしまいました。実はカーグラフィックには使えませんでしたが、マクラーレンのフォトグラファーが撮ってくれた写真の中に大口を開けてコーナリングしている写真があったのです。
アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェというポルトガルのサーキットだったのですが、ここは“ミニノルドシュライフェ(ニュルブルクリンク北コース)”というくらいに激しいコースなのです。アップダウンやブラインドコーナーの連続。ライン一本間違うとコースから飛び出してしまってもおかしくはないくらいの難易度の高いコースです。ブレーキやスタビリティ、ハンドリングも全て試せますので、以降マクラーレンがよくテストで使うサーキットになりました。その難攻不落なサーキットにおいて、もちろん緊張感はありますが、そこで大口を開けて笑いながらコーナリングをしていたのです。
つまり、ドライビングプレジャーがありかつパフォーマンスが高いという全てを併せ持ったクルマということなのです。やはりフォーミュラ1のコンストラクターとして、最新の技術を持っているところがスポーツカーを本気になって作るとこういう仕上がりになるのだなということを、いやが応でも自覚させられました。
また、ポルトガルの一般道の舗装は良くないのですが、このクルマは乗り心地がとても良いのです。プロアクティブシャシーコントロールという油圧で制御するシステムが相当効いていると思いました。本当にカーペットライドで、例えばレンジローバーやロールスロイス、そういうクルマたちと比べても見劣りしないくらい乗心地もあるのです。そして目の覚めるようなハンドリング、言葉にできないようなスタビリティの高さ、これら全てを併せ持っているのです
これが本当に復帰第一作かという驚きがありましたね。
それからマクラーレンの技術者と話していると、建前がなく本音で話せる印象があり、すごく正直なブランドという印象もありました。
◆様々な使い方を考えているP1
正本:2011年にMP4-12Cクーペを出して、それから『MP4-12Cスパイダー』、そして2013年には『P1』という限定375台の、アルティメットシリーズの最初のモデルを出しました。それから毎年スポーツシリーズという、エントリーバージョンのシリーズを出し、徐々にマクラーレンとしてポートフォリオを形成してきています。こういった中で印象的なものはありましたか。
加藤:全て印象に残っています。P1は簡単に300数十km/hの世界へ連れてってくれました。ハイブリッドの本格的なスーパースポーツカーに初めて乗ったのですが、元々のエンジンがパワフルなことに加えて、電気ターボが加勢した時の未知の加速力は、ものすごく印象に残っています。
P1に関していえば、EVモードで走ることができる設定があります。そういった意味では実用的でもあります。EV走行ができることによって、税金の減免措置が受けられることなど、非常に多方面でよく考えられたスポーツカーだという印象を持ちました。例えばこれだけのスーパースポーツカーで、朝ひとっ走りどこかへ行く時に、周囲の騒音は気にするでしょう。そういうところではEVモードで出て、ある程度交通量の多いところでエンジンを作動するなど、そういった理にかなったことをしているのです。本当にマクラーレンは正直に色々な使い方を考えているなという気がしました。
◆セナとスピードテール、両極の2台
正本:そのP1の流れで昨年はアルティメットシリーズの究極のトラックエディションの『セナ』を出し、先日のジュネーブモーターショーでは究極のロードバージョンとして『スピードテール』を出しました。マクラーレンとして2シーターミッドシップというカテゴリーの中で、かなり幅の広い色々なキャラクターを持つクルマを作っています。その辺りのマクラーレンについてどう思いますか。
加藤:シルバーストーンサーキットでセナを乗せてもらいまして、800馬力のノンハイブリッドはこんなにすごいのかという思いでした。この800馬力のノンハイブリッドはこれが最後になるということはわかっていましたので、その最後にあれだけ猛烈な、猛烈であるからこそ素晴らしい魅力を持ったスポーツカーに乗れたことは、自分のキャリアの中で一番のハイライトだと思います。
一方で、ハイブリダイゼーション以降のスピードテールはアルティメットシリーズの一番上のスポーツカーに位置づけられるのでしょうが、いずれ民主化されて他の量産車にもフィードバックされてくるということを考えると、未来のマクラーレン像を暗示している気がします。
正本:今後もマクラーレンは積極的にミッドシップ2シーターというカテゴリーの中で、様々なクルマを出していくので期待してもらいたいですね。
では最後にマクラーレンに対してコメントをお願いします。
加藤:マクラーレンは本当に確かな技術力がある上に、カーボンの製造工場、カーボンコンポジットテクノロジーセンターをイギリスに作り、今年の後半から量産体制に入っていきます。スポーツカーメーカーとして規模は小さいながらも将来を見据えてハイブリダイゼーション、素材の部分でリーディングカンパニーとして進化していくでしょうし、これからもパワーユニットがどう変わろうとも、マクラーレンならではのドライビングプレジャーや、DNAを誇示していくメーカーとしてすごく期待しています。乗ると本当に素晴らしいキャラクターを持っているので、ライバルは色々ありますが、勝るとも劣らないパフォーマンスを持っているメーカーとして非常に期待しています。
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