2020年01月16日 10:22

トヨタが「全固体電池」の開発状況を明らかに、量産化への課題は

オートモーティブワールドの専門セッションにおいて、トヨタ先端材料技術部チーフプロフェッショナルエンジニア中西真二氏による、全固体電池の現状と課題に関する講演が行われた。

全固体電池は、従来型の電池の電解質を固体にすることで、高いエネルギー密度と出力特性の電池を可能にする。後続距離や充電時間に課題があるEV用の次世代電池として期待されている技術だ。トヨタは昨年、小型EVのコムスで実験走行に成功し、2020年中には実際の製品に搭載するとしている。最初は、コムスやその他パーソナルモビリティへの搭載が予想されるが、実現すればEV普及に弾みがつく。

とくにトヨタは、現状のリチウムイオン電池のピュアEV(BEV)は、長距離および乗用車には適さないと考えており、全固体電池の実用化とEVシフトをセットにして考えている。

中西氏によれば、現状のリチウムイオン電池のエネルギー密度は300Wh/L、出力密度は8000W/L。全固体電池は400から800Wh/L前後のエネルギー密度をカバーできる。エネルギー密度が高いほど、同じ大きさでも高い容量の電池が実現できる。また、全固体電池は液体の電解質を使わないので、電極のショートを防ぐセパレータが不要という特徴もある。セパレータは絶縁体だが、リチウムイオンを通す繊維素材で作られる。液体電解質の場合、セパレータがないと、圧力などで正極(アノード)と負極(カソード)が接触してしまいショートする。電解質は硫化物質または有機溶剤が使われるので爆発や引火の危険性もある。

電解質が固体なら、電極は電解質で分離されているのでそもそもセパレータは不要だ。しかし、リチウムイオンの行き来が自由で(つまり半導体の特性を持つ)薄膜にできる素材の探索が難しい。全固体電池の実用化は、いかに良好な特性を持つ個体電解質を探索・発見するかにかかっている。

東工大とトヨタは、全固体電池の研究開発の中で、2011年にLGPSと呼ばれるリチウム、ゲルマニウム、リン、硫黄によるセラミックス素材を発見している。LGPSは従来の液体の有機電解質と同等なイオン伝導率を示した。LGPSの発見は、全固体電池の実用化が一歩進めた。その後、東工大とトヨタは、LGPSをベースにゲルマニウムの代わりにシリコンを使いさらに塩素を追加した新しいLGPS系無機電解質(Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3)を発見した。

新しい素材で作った全固体電池は、従来型のリチウムイオン電池より3倍の電流が流れることが確認できた。さらに−30度、100度でも安定して充放電ができることも確認された。氷点下の低温や水の沸点でも動作するのも電解質が固体であることのメリットだ。

全固体電池の基礎技術は第2段階に入ったが、実用化には量産など製造技術の問題もある。ひとつは、固体の電解質をどのように重ねて電池の形にするかという問題だ。実験用にコイン型、円筒形に作るのはそれほど難しいものではない。しかし、EVのような大容量、大出力にするには、セルを何枚も集積したモジュールを作らなければならない。

筒に入れるなら正極、負極、電解質をパウダー状にすればいいのだが、集積化を含めた量産を可能にするには別の方法が必要だった。トヨタでは、電解質の粉を液体とのり(バインダー)を混ぜる湿式コーティング技術を開発した。これにより、電解質の層を大幅に薄くすることができ、角形のセルのプロトタイプを完成させている。

全固体電池はまだ研究開発段階だが、生産技術もある程度同時に進められている。実用化、本当の量産化にはまだハードルはあると中西氏はいうが、開発は着実に進められている。

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