2020年06月29日 05:59

中国モーターショー『模倣』と『学習』の狭間で…中国市場専用車の時代

2019年までの北京・上海ショーを総括する企画。第3回は、中国市場をターゲットにして企画開発された外国ブランドの量産車/コンセプトカーを集めた。

中国における2019年の新車登録台数は約2100万台であった。前年比で9%の減少がみられたものの、依然世界第1位の自動車市場である(出典: Statista)。

第2回とやや内容が重複するが、中国ショーでは2010年代初頭からドイツ系、追ってフランス系ブランドによって、後席空間を拡大した同国専用のロングホイールベース版が続々デビューした。家族、とくに高齢者を後席に乗せたり、運転手を雇う場合が少なくない現地事情を汲んだものだった。

ボディカラーでは、ゴールド系がコンセプトカー/生産型ともに人気色となった。それはアップルが2013年のスマートフォン『iPhone 5S』に、中国市場を意識したといわれる金色を採用して人気を博したのと時期を一にする。

◆ランボルギーニもR-Rも

超高級車の領域では、中国向けの特別仕様車が花盛りとなった。ランボルギーニは「ムルシエラゴLP670-4 SVチャイナリミテッドエディション」を北京モーターショー2010で発表した。

ロールスロイス(R-R)も中国専用、もしくは中国の顧客を意識したモデルを数台発表している。なかでも究極は2015年「セレニティ・ファンタム」であろう。内装には絹を用い、刺繍と手描きによって花模様が幾重にも展開されていた。2019年現在も、R-Rとランボルギーニにとって、中国は米国に次ぐ大きなマーケットである。

自動車メーカーが、いかに中国を重視していたかは、ダイムラーのディーター・ツェッチェ前CEOが在任中、中国ショーのプレゼンテーションでたびたび用いた「Made in China for China」に集約されよう。BMWもそれを意味する「在中国 為中国」を2018年の現地製『X3』の発表で用いている。中国の合弁工場で、より現地のニーズに沿ったメルセデスベンツ車を供給することをアピールしたものであった。まさに、世界の自動車メーカーが、中国にラブコールを送っていたと定義することができる。

◆歴史は繰り返す

自動車以外だけでない。過去約十年、明らかに中国市場を意識した広告やスペシャルエディションが、ヨーロッパのさまざまな業界によって展開されてきた。

長年高級筆記具として知られてきたモンブランはピアニストのラン・ランを、腕時計のティソが女優リウ・イーフェイをアンバサダーとして起用したのは、ほんの一例に過ぎない。

そして旧正月が近づくたび、毎年さまざまな欧州ブランドが干支にちなんだスペシャル・エディションを展開した。そうした中国顧客への厚遇ぶりに、筆者は同じアジア人として羨望とも嫉妬ともいえる感情さえ抱いたものである。

しかし、自動車の場合、最重点市場に合わせて商品企画を行うのは、過去にもその歴史で繰り返されてきたことだ。たとえば「メルセデス」。20世紀初頭ダイムラーの販売代理権を取得したニース在住のエミール・イェリネックが、「Daimler」ではあまりにドイツ的語感で親しみにくいとして、代わりに娘の名を流用したものだった。

そのダイムラーベンツは第二次大戦後、ニューヨーク代理店の強い要望で1955年メルセデスベンツ『300SL』を開発する。さらに1950年代末には、当地のデザインの流行にしたがってテールフィンを備えたセダンまで発表した。300SLと対比して回顧されることが多い1956年BMW『507』も、全生産台数250数台中の大半は北米に輸出された。

1950-60年代のイタリア車もしかりである。フェラーリにおけるファクトリー・レーシングチーム「スクデリア・フェラーリ」の資金は、アメリカ向けラクシュリーGTの売上で支えられていた。

アルファロメオは『ジュリエッタ・スプリント』、『スパイダー』などの対米輸出が戦後再興の原動力となった。その恩恵がボディを受託生産していたベルトーネ、ピニンファリーナにも及んだことで、カロッツェリアは馬車時代の面影を残す手工業から近代工業へと脱皮することができた。さらに1970年代以降は、アラブ諸国の富裕層を意識したチューナー/コーチビルダーが数々現れた。

そうした意味で、2010年代に自動車メーカーが中国ユーザーの趣向を探ったのは、当然の成り行きといえよう。

◆気になる「00后」の車選び

ところで新型コロナ感染症対策で世界の自動車販売が落ち込む中、中国における2020年3月の販売台数は前年比32.1%減であった。それでも、4月に欧州27カ国の登録台数が76.1%減となったのと比較すると、落ち込み幅は半分以下である。

さらに4月の中国における自動車出荷台数は前年同月比0.9%増の200万台を記録した。2018年以来マイナスが続いてきた台数が久々にプラスを示したことで、世界各地で苦境に直面する各自動車メーカーが、再び中国を頼りにする可能性が出てきた。

彼らにとって、これからは中国語でいうところの「00后」、つまり2000年代生まれ世代の嗜好を観察してゆく必要があろう。生まれて以来、西欧的な生活様式に囲まれて育った彼らが、どのようなセンスを持って自動車購買の主役となるかは未知数である。

そうした世代は大都市で、日本とは比較にならない普及率をみせるシェアリング自転車や電動キックスケーターを駆使し、縦横無尽に移動している。近い将来の中国で、自動車のライバルは自動車ではないのかもしれない。

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