2020年09月02日 06:30

N-BOX の牙城を崩せるか? 今や国民車「軽スーパーハイト」5車種を徹底比較

いま、日本でもっとも売れている乗用車はホンダ『N-BOX』だ。スーパーハイトワゴンの軽自動車である。2019年の年間販売台数は25万3500台で、これは登録車(小型・普通乗用車)のトップセラーとなった『プリウス』の12万5587台の倍以上というとんでもない数字。実はN-BOXが日本の最量販乗用車となるのは3年連続だ。

そして何を隠そう、軽スーパーハイトワゴンの大人気はN-BOXに限ったことではない。2位のダイハツ『タント』(17万5292台)をはじめ、3位スズキ『スペーシア』(16万6389台)と販売上位を同ジャンルが独占。日本の国民車と言えるほど高い人気を誇るのだ。

軽スーパーハイトワゴンが好まれる理由はいくつかある。ひとつは軽自動車の前提として経済性が高いことだ。

まずは維持費で、毎年の自動車税は1万0800円。小型車でもっと低額な区分となる排気量1000cc以下でも2万5000円なのだから、激安だ。重量税も新車購入時に支払う3年分が9900円で、登録車の1トン未満の2万4600円に比べて抑えられている(エコカー減税は計算に含めず)。

車両価格は、軽スーパーハイトワゴンの場合はミドルグレードを選ぶと150万円を超えることも珍しくなく、軽自動車だからといってコンパクトカーに対して絶対的に安いとは言えないが、基本的には3年もしくは5年乗った後に手放す際のリセールバリューがコンパクトカーよりも高い傾向にある。だから結果的に経済性が高いと判断できる。

以上はすべての軽自動車に共通することだが、さらに軽スーパーハイトワゴン特有の好まれる理由も存在する。まずは室内の広さだ。パッケージングに優れ、コンパクトカー顔負けの後席の広さは触れるたびに驚かされるし、選ばれる大きな理由となる。

さらに、後席にはスライドドアを備えることで狭い駐車場などでも乗り降りしやすく、特に小さな子供がいるユーザーは子供がドアを勢いよく開けるなどの不注意で周囲のクルマにドアをぶつける心配が払拭されるのも魅力だ。

スーパーハイトワゴンクラスは激戦区だけにライバル同士が激しく火花を散らす戦いとなっている。N-BOX以外は「なんとしてでもN-BOXの牙城を崩そう」と躍起になっているのだ。今回は、そんな各車の状況、特徴や長所、ライバルに差をつけるべく用意した独自機能などを紹介しよう。

◆ダイハツ・タント

2003年に初代モデルを発売し、このクラスを切り開いたパイオニアでもあるダイハツ・タント。ライバルにはない飛び道具は「ミラクルオープンドア」と呼ぶ、助手席ドアと助手席側後部ドアを同時に開けるとBピラーが消えて第開口部となる仕掛けだ。

助手席をロングスライド化し、シートレールを床に埋め込むことで邪魔にならないといった特徴もある(これは先代のタントに採用されたのち現行型のN-BOX(の一部仕様)にも波及した。

2019年にデビューした現行モデルは、運転席にもロングスライド機能を搭載。そのスライド量は540mmで、後席へのウォークスルーなどを楽にしている。

また、半ドア状態になると電動でドアを引き込んで確実に閉めるイージークローザーを助手席に用意。さらに、あらかじめ設定しておくと乗車時にクルマに近づくだけで自動的にスライドドアが開く機構など、使い勝手を良くする独自のアイデアも魅力だ。

◆スズキ・スペーシア

現在、王者N-BOXの次の販売台数を誇るスペーシア。そのインテリアを見て感じるのは、新しい感覚と大容量収納スペースの多さだ。

たとえばインパネを見ると、「旅行用のスーツケースをイメージしお出かけ気分を盛り上げる」という助手席前の造形や質感が特徴的。内部は収納スペースになっていて、その下の引き出しやさらに下のグローブボックスと合わせると、助手席前には隠せる状態でボックスティッシュが3つも置けるなど徹底したこだわりを感じる。

また助手席の座面下にも大容量の収納スペースがあり、収納力という利便性でライバルを大きくリードするのがおもしろい。運転をサポートする装備を見ても、ヘッドアップディスプレイを用意しているのはこのクラスでスペーシアのみだ。

そしてスペーシアの販売台数アップに貢献している存在が『スペーシアギア』。これは独自デザインとしたフロントやルーフレールの装着により、流行のクロスオーバーSUVテイストとした派生モデルである。同社の『ハスラー』などとは異なり最低地上高のアップなどはなく、メカニズム的にはスペーシアとの違いはない。

しかし、このクラス初のSUVテイスト(後に『ekクロススペース』も登場した)とすることで「楽しそうなスーパーハイトワゴンが欲しい」というニーズを満たした意味は大きいだろう。

◆日産ルークス&三菱ekスペース/ekクロススペース

日産『ルークス』と三菱『ekスペース』/『ekクロススペース』(以下:ルークス&ekスペース)は基本設計を共用する兄弟車だ。そのセールスポイントはまず、後席ひざまわりスペースがライバル以上に広いことである。このクラスはどれもひざまわりスペースは呆れるほど広いのだが、エンジンルームの前後長を詰めた設計などの成果により、ルークス&ekスペースの後席はクラスナンバーワンの広さとなっている(2番手となるN-BOXとの差は僅差だが)。

また、スライドドアの開口幅(最大部)も約650mmとクラストップで、乗り降りのしやすさでもライバルをリード。上位グレードのスライドドアは電動式だが、そこに組み込まれるハンズフリー機能(足の動きを合図に手を使わずにドアを動かせる)が「左右ともに搭載」と「開閉どちらもできる」の条件を満たすのはライバル中ルークス&ekスペースだけである。

加えて後席ロングスライド(約320mm)を生かし、後席に人が座れる状況で積載できる荷物の量がこのクラスでもっとも多い(奥行き675mm)といった魅力も実用面でのアドバンテージだ。さらに前席はライバルよりも着座位置が高いことで、視界や見晴らしがいいと感じる人もいるだろう。

日産や三菱として最高峰の先進安全技術が搭載され、その性能でもライバルをリードしている。アダプティブヘッドライト(ライバルではタントしか採用していない)のLEDが24個とタントよりも多くて制御が細かいのも自慢だし、上級グレードには10年間にわたり利用料無料で使えるSOSコール(緊急通報システム)を標準装備しているのも特筆すべき魅力。

好みに合わせ、シンプルな「ルークス」や「ekスペース」からスポーティな「ルークス ハイウェイスター」そしてSUVテイストの「ekクロススペース」とすべてあわせれば4タイプのデザインが選べるのも魅力だ。

◆ホンダ N-BOX

ライバルに対して販売台数で大きくリードしている絶対王者のN-BOXだが、実は「これだから売れている」という明確な理由は見当たらない。

実用面ではクラス2位(今年春に現行ルークス&ekスペースがデビューするまではトップ)の後席広さ、座面を跳ね上げたりもできる独自の後席シートアレンジ、ライバルにはない後席センターアームレストの採用、そして驚異的な荷室床の低さなど独自の特徴はいくつもあるが、それだけでライバルに大きく差をつける販売台数となっているかといえば、そうではないだろう。

ハイレベルな実用性というベースがあるうえで、高い走行性能、そしてシンプルながら見栄えがいいデザインなどが評価され、そのトータルの魅力から人気を得ていると考えられる。

ライバル勢(上位仕様に搭載)と異なり全車にACC(アダプティブクルーズコントロール)を装備するのも特徴。ただし、他車は渋滞では停止までおこなう(ルークス&ekスペースは停止保持まで可能)な全車速対応なのに対し、N-BOXは渋滞などで速度が約30km/h以下になるとシステムがキャンセルされる。

◆まとめ

ガチンコライバルが切磋琢磨しているこのクラスだが、冒頭に書いた通りN-BOXは販売面で独走状態。ライバルは「打倒N-BOX」を抱えているが、その勢いを止めるのは簡単なことではない。

しかし、その切磋琢磨がクラス全体の水準を底上げし、どのモデルを選んでも実力が高いという状態を作り出しているのは間違いないところだ。

選択の際は、内外装デザインの好みのほかに後席スライドドアの機能、荷室アレンジ、先進安全装備、走行フィーリングなども比較しながら、自分のカーライフと照らし合わせてどんな機能が必要かを考えつつ、最適な1台を見つけるといいだろう。

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