2020年10月23日 12:35

【千葉匠の独断デザイン】『ホンダe』はホンダらしい? らしくない?

◆EVを活かして初代シビックの面影

EVというだけでなく、『ホンダe』は話題豊富なクルマだ。インパネに並ぶワイドなディスプレイ、音声認識システム、CMS(カメラモニタリングシステム=いわゆるミラーレス)、ポップアップ式のドアハンドル…等々、世界初ではないにしても目新しいアイテムに事欠かない。いつの頃からかホンダが忘れていた進取の気風の伝統が、ホンダeで復活したように思えるのは嬉しいことだ。

かつてのチャレンジングなホンダに憧れた世代なら、ホンダeに初代『シビック』の面影を見て拍手したくなるだろう。デザイナーが具体的に初代シビックから引用したのは、ショルダーから2回折れてCピラーへと立ち上がるラインだけ。初代シビックを彷彿とさせるのは、むしろプロポーションだ。

サイズ的に近い『フィット』とは正反対にAピラーを後ろに引き、ボンネットをあえて延ばした。水平基調のサイドビューは、Cピラーをやや強めに傾斜させて台形のイメージ。80年代にAピラーを前進させたキャブフォワードやベルトラインを前傾させたウエッジシェイプが流行り始める前の、昔懐かしくも安定感のある2BOXプロポーションをホンダeは描いてみせた。

FF・2BOXのルーツは50年代の英国のミニだが、VWの初代『ゴルフ』より2年早い1972年に登場した初代シビックは、それを世界に広めたパイオニアのひとつと言って間違いないだろう。そこにホンダeのデザインは立ち返った。モーターをリヤに置くRRレイアウトを活かせば、衝突安全基準を満たしながらフロントオーバーハングを70年代のように短くできる。EV専用車というプロジェクトは、初代シビックのプロポーションを再現する絶好のチャンスでもあったのだ。

◆N-ONEに続く2作目のヘリテージデザインは「諸刃の刃」

しかし…。自社の伝統にある名作に題材をとり、それをモダンに表現することを「ヘリテージデザイン」と呼ぶが、ホンダがこれをやったのは『N-ONE』に続いてホンダeで二度目。N-ONEは往年のN360(67〜71年)をモチーフにした。

もともとホンダは過去を懐かしむような社風ではなく、N-ONEのデザインが提案されたとき、社内には多くの議論があったという。そこでひとつ殻を破ったからこそホンダeのデザインが成立したわけだが、ホンダのラインナップのなかで「ヘリテージデザイン」は少数派。ホンダeの主戦場であるヨーロッパにN-ONEはないから、あちらでは変わり種と見なされても不思議はない。

そんなホンダeのデザインが「ホンダらしい」としたら、それ以外の(日本ではホンダeとN-ONE以外の)ホンダ車は「らしくない」ということになってしまう。ホンダeはホンダ・ブランドにとって諸刃の刃なのだ。

◆EV商品戦略はどこに?

せっかくのEVだから、その特性を活かして本流とは違うデザインをやるというのは理解できる。しかし今や、EVを1車種だけ出して済む時代ではない。VWは「ID.」というEVサブブランドを掲げてすでに『ID.3』と『ID.4』を世に出し、それに続く車種もコンセプトカーで予告済みだ。メルセデスは旗艦『EQS』を手始めに6車種のEV専用車を展開すると発表した。一方、グループPSAはプジョー『e-208』、『DS 3 クロスバック・E-TENSE』、シトロエン『e-C4』と、内燃機関車と同じボディでEVを送り出しつつある。

EVをどうラインナップしていくか、その展望を示すべき時期に来ているわけだが、ホンダeを見てホンダの今後のEV商品戦略を想像するのは難しい。主流のデザインからかけ離れているからだ。

ひとつあるとすれば、BMWミニがオリジナル・ミニのイメージを守りながら車種展開しているように、初代シビックをモチーフに複数のEVをシリーズ展開することだろう。しかしこれはなかなか考えづらい。案の定、ホンダが北京ショーで発表したSUV『e:concept』はホンダeとはまったく違って、むしろ本流に沿うスポーティでモダンなデザインだった。

EV戦略の先陣を切る存在のホンダeではあるけれど、後に続くEV商品群のイメージリーダーでないのは明らかで、単発のニッチ商品だと理解した方がよさそうだ。それが成功するか否かは、主戦場のヨーロッパでEV市場がいつまでニッチであり続けるかにかかっている。

千葉匠|デザインジャーナリスト

デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

記事提供:レスポンス

掲載に関する免責事項について
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。

ホンダ

価格.comで最新価格・クチコミをチェック!

ホンダ(honda)の自動車(本体) ニュース

もっと見る

このほかの自動車(本体) ニュース

もっと見る

自動車・バイクニュースランキング

  1. 日産 Xテラ

    日産の新型SUV『Xテラ』、どこにでも行ける?…中東で発表

    自動車(本体)
    2020.11.29 06:28
  2. スバル BRZ 新型

    【スバル BRZ 新型】走りへの期待を高めるエクステリア[詳細画像]

    自動車(本体)
    2020.11.24 09:07
  3. アウディ TT ブロンズセレクション

    アウディ TT にアウディスポーツの特別仕様、「ブロンズセレクション」…欧州発表

    自動車(本体)
    2020.11.29 06:05
  4. ホンダ N-ONE プレミアムツアラー

    【ホンダ N-ONE 新型】「プレミアムツアラー」は質感を高めるアイテムとターボが売り[詳細画像]

    自動車(本体)
    2020.11.27 09:23
  5. ホンダ・シティ・ハッチバック

    ホンダ シティ にハッチバック、フィット と シビックとの間に位置…タイで発表

    自動車(本体)
    2020.11.27 09:00

総合ニュースランキング

  1. VF-1 バルキリー ウェポン セット

    「VF-1 バルキリー」用ウェポンセット、劇場版の2発並列搭載タイプも再現

    模型
    2020.11.29 06:55
  2. 50V型で3万円台の格安モデルも登場! 2020年下半期4Kテレビまとめ

    「50V型で3万円台」の格安モデルも登場! 2020年下半期発売の4Kテレビまとめ

    薄型テレビ・液晶テレビ
    2020.11.28 00:01
  3. 期間限定39,800円、ゲオが“ベゼルレスフレーム”50V型4K/HDR液晶テレビを発売…11月26日

    【12/25まで】税込39,800円&送料無料のチャンス、ゲオが“格安4Kテレビ”を再び発売

    薄型テレビ・液晶テレビ
    2020.11.27 11:45
  4. 「キン肉マン連載41周年 CCP×トイズキング CMC NO.EX キン肉マン フェイスフラッシュ 業火のクソ力 Ver.」

    連載41周年記念「キン肉マン フェイスフラッシュ 業火のクソ力 Ver.」が11/29発売

    フィギュア
    2020.11.29 00:01
  5. 「超合金魂 GX-95 闘士ゴーディアン」

    「分身合体ゴーディアン」が40年の時を経て超合金魂で新生、39,600円で発売

    フィギュア
    2020.11.29 07:05

読んでおきたい まとめ記事

自動車

カー用品

バイク

写真で見る

  • 「FUJIFILM GFX100 IRバージョン」
  • ROG Kunai 3 Gamepad
  • GigaCrystaキャッシュバックキャンペーン
  • ロールスロイス・ブラックバッジ・ネオンナイト
  • BMW 2002 ti “パトカー”
  • EV44 Rainbow