【ドゥカティ パニガーレV4S 試乗】フィールドを限定してしまうのはもったいない…鈴木大五郎
様々なカテゴリーのマシンをリリースしている現在のドゥカティであるが、やはりもっとも強くそのイメージを感じさせるのはレーシングスタイルのスポーツモデルであろう。そのフラッグシップともいえるのが『パニガーレV4』シリーズである。
ライダーの望みにアレンジできる多彩なセッティング能力
ドゥカティのアイデンティティともいえるL型ツインエンジンではなく、V4エンジンを同社の量産市販車としてはじめて搭載した歴史的1台であるが、これはモトGPを戦っているデスモセディチから様々なフィードバックを受けた結果でもある。モトGPマシンレプリカであるとともに、市販車最高峰といえるスーパーバイク選手権に参戦するベースマシン的存在であるが、ホモロゲーションモデルである999ccのV4Rに対して、V4/V4Sは排気量が1103ccとなっている。
これはレーシングフィールドに特化することなく、より幅広いシチュエーションで楽しめるワイドなキャラクターを盛り込んだからである。とはいえ、もちろんサーキットでの走りを前提としたスペックが盛り込まれた最新鋭のマシンとなっている。
2018年に発売となったV4は、とにかくパワフルかつアグレッシブな特性で乗り手を選ぶような凄みを感じさせたが、2020年にマイナーチェンジが施された現行モデルはエンジン特性のアップデートに加えて足回りも変更され、よりフレンドリーな特性となっている。レスポンスの良いエンジンながら、電子制御の恩恵によりコントロール性を高め、さらにはいかようにもライダーの望みにアレンジできる多彩なセッティング能力も備えている。
まるでツインエンジンかのような鼓動
現在、このV4エンジンはアドベンチャーモデル『ムルティストラーダ』にも改良されて搭載されているのであるが、正直、初期型のV4パニガーレに乗った段階ではそれをイメージすることは出来なかった。しかし現行モデルに乗った際には、「ありだな。」と思ったほど、その乗りやすさに磨きがかけられていたのだ。 不思議なことにこのエンジン、低回転域ではまるでツインエンジンかのような鼓動を感じさせる。
トルクも十分で、街乗りでも半クラを多用するなどの気遣いが不必要なほどコントローラブルでもある。パワーの盛り上がりとともに爆発の粒が揃っていき、高回転に向けフリクションなく一直線に吹け上がっていくフィーリングは、ドゥカティ独自のバルブスプリングを用いないデスモドロミックによるものだろう。
自然なバランスにチューニングされたウィング
デザイン上の大きなアクセントにもなっているウィングは、50km/hで1kg、300km/hで37kgものダウンフォースを生み出す実用的にしっかりデザインされたものである。一般道でそれが機能しているかを感じることはないが、逆に言えばそれだけ自然なバランスにチューニングされているとも言えるだろう。
ハンドリングもレーシングマシン的クイックさよりも落ち着いた挙動が印象的だ。Sモデルは電子制御式オーリンズサスペンションを採用するが、これにより高荷重対応一辺倒ではなく、街乗りでも意外や乗り心地も良好で豊かな接地感を提供してくれる。
このマシンの本領はサーキットで解き放たれるものであるのは確かであろう。しかし、過去の同社のフラッグシップモデルが強烈にその印象を感じさせたのに対し、パニガーレV4Sはよりワイドなシチュエーションに対応した懐の深さを持っている。その美しいスタイリングやサウンド、刺激、ステータス性等、多少の我慢は必要であるが、フィールドを限定してしまうのはもったいないと感じさせる魅力に溢れたマシンとなっている。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★
鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト
AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。
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