2022年08月05日 09:40

【ヤマハ ナイケンGT 試乗】前2輪のパフォーマンスに、食わず嫌いを反省した…鈴木大五郎

ヤマハ『ナイケンGT』のスタイリングにすんなり馴染めないのは仕方ないことだと思われる。

なんといってもフロントにはホイールが2つ付いているし、フォークも片側に2本ずつ装着されている。加えてフロントカウルはなんだか凄い迫力…。ところが、実際に乗ってそのパフォーマンスを体感すると、食わず嫌いを大いに反省することとなった。

重さを感じさせない抜群の安定感

サイドスタンドからのマシンの引き起こしではさすがに重さを感じさせる。特にフロント周りは装着されているパーツの数からしても想像通りの重さだ。しかし、走り出せばもうその姿を客観的に想像出来ないほどの自然なフィーリングである。

ハンドリングはフロントにやや重さを感じさせるが、それは嫌な類のものではなく、安心感とも言い換えられるもの。そこに2輪が存在しているような違和感はなく、それでいて味わったことのない安心感を伴いながら、右に左にスイスイとマシンをバンクさせていく。強引に曲がるといったラフな操作をしても安定しているのはまさにこのシステムの恩恵であろう。

さらに、荒れていて少し砂利が浮いているような路面や減速帯、完全なるウェット路面でもそのポテンシャルを遺憾なく発揮する。それでいて、バンクしていく感覚やその操作感はバイクそのものであり、想像された4輪車のようにハンドルを切って曲がるといった操作を走行中に意識することはほとんどなかった。

“ハンドリングのヤマハ”ならではの気持ち良さ

ヤマハハンドリングという言葉がある。なかなかこれを解説するのは難しいのであるが、個人的にはバイクのリーンとステアリングの連動具合の気持ち良さとか、わかりやすさを感じるとき、ヤマハハンドリングを思い起こす。

そして、ナイケンGTからもこの気持ち良さがはっきり感じられ、開発陣が相当拘って味付けしたのではないかと推測出来る。さらには路肩の段差だとか、ギャップ等、ハンドルを取られてしまうのでは?といった心配をよそに、何事もなかったようにクリアしていってしまう不思議さ。この走りを味わってしまうと、違和感を覚えたスタイリングも可愛らしく思えてくるから不思議である。

心臓部には従来型『MT-09』の3気筒エンジンを搭載。十分トルクフルであるしパワフル。発進の際などは、やはりフロント2輪の安定感からだろうか。よりイージーにクラッチミートに集中出来るメリットもある。そして、回せばモーターサイクルらしい爽快感を味わうことが出来る。ベースモデルで少し感じられたアクセル開けはじめのレスポンスの唐突さも、重くなった車重によってか、気になりにくいものとなっている。

267kgの車重とパワフルなエンジンに見合った車体剛性も持ち合わせており、フル加速しても不安はない。もちろんそれを受け止めるブレーキもしっかり効くし、これこそフロント2輪最大のメリットである、技量に関わらずパフォーマンスを引き出すことも可能だ。

誰もがモーターサイクルの醍醐味を安全に体感できる

ナイケンが発売されたのが2018年。鳴り物入りとしてデビューして以来、じつは初めての試乗であったが、日本のモーターサイクルメーカーの技術力とか、高い志に触れたように感じられて嬉しくなった。販売はあまり芳しくないと聞くが、それにより生産終了などとならないことをとにかく願う。200万円近い車両価格は高いと感じられがちだが、その内容をしっかり把握してみれば納得出来るもの。

このシステムを採用したバリエーションモデルもいろいろと見てみたいと思うほど、実は大きな可能性を秘めていると感じられるのだ。危うさの中に感じられるモーターサイクルの醍醐味というものがあるとすれば、ナイケンこそが誰もがその領域に安全に近づくことが可能となるマシンといえるのかもしれない。

試す価値は大いにあると断言しよう。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★

ハンドリング:★★★★

扱いやすさ:★★★★

快適性:★★★★

オススメ度:★★★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

記事提供:レスポンス

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