ドゥカティ ニュース

2022年10月04日 05:50

【ドゥカティ デザートX 試乗】らしさを取り戻したドゥカティに「おかえりなさい」と言いたい…伊丹孝裕

注目のニューモデルがついに日本上陸

待望の、と言っていいだろう。ドゥカティのブランニューマシン『デザートX』が、ついに日本へ上陸した。

そのコンセプトモデルが披露されたのは、2019年のEICMA(ミラノショー)でのことだ。多くのメーカーがアドベンチャーモデルに力を注ぐ中、それはなんの前触れもなく発表され、ひと際高い注目を集めていた。それから3年弱の時を経て、エンジンもフレームも足まわりもまったくの別モノへ進化。しかし、あの魅力的なスタイリングはほぼそのまま再現され、一般公道を走れることになったのだ。

オフロード寄りの純然たるスポーツモデル

ここで言う魅力的なスタイリングとは、80年代から90年代にかけて黄金期を築いたパリ・ダカールラリー参戦マシンを思わせるたたずまいだ。自社マシンを送り込んでいたわけではないが、当時の親会社であるカジバがドゥカティのLツインエンジンを採用。1990年と1994年には、優勝という輝かしいリザルトに貢献している。

という昔話から始めておいてなんだが、デザートXはいわゆるネオクラシックブームに乗っかったモデルではない。無論、その要素は随所に散りばめられているとはいえ、オンロードかオフロードなら、完全にオフ寄りの純然たるスポーツモデルだ。ドゥカティのリリースには「オフロードバイク」、あるいは「エンデューロバイク」という文言が使われ、アドベンチャーバイクにもカテゴライズしていない。

実際、デザートXはライダーフレンドリーではない。875mmのシート高は、身長174cmの私(伊丹孝裕)がまたがって、両足のツマ先が接地する程度。路面状況が悪い場所では、サイドスタンドの出し入れに若干の緊張がともなう。

6パターンのライディングモード

エンジンの出力特性やパワー、トラクションコントロールなどの介入度が変化するライディングモードには、オンロード用に4パターン(スポーツ/ツーリング/アーバン/ウェット)、オフロード用に2パターン(ラリー/エンデューロ)が設定されているものの、最もダイレクトなスポーツ、もしくはラリーがナチュラルで使いやすい。

オフロード用はしっかり検証できていないのだが、ツーリングやアーバンだと、スロットル微開域のレスポンスが間引かれ過ぎ、優しくあろうとするあまり、やや不自然な領域がある。右手の動きに対して、半テンポくらいのタイムラグなら「穏やか」と評せるものの、ワンテンポくらいの間合いが生じる時がある。結局、スポーツを選んで自分の意志でコントロールした方が一体感が高かった。

それでもなお、ややダルな領域は残され、ラリーモードでもそうだった。試乗中、それを不思議に感じていたのだが、少しばかり不整地に持ち込んでみて、「あぁそういうことか」と分かったことがひとつ。グリップが期待できない路面で、完璧にリニアだとむしろ扱いづらくなるため、それを見越してのセッティングなのだと思う。外乱の影響を受け、右手の動きがラフになっても一瞬の待ちがあり、そこでペースを落とすもよし、開けられるなら気にせずその領域を飛び越えるもよし。ライダーのスキルに任せるのでいかようにも、とテストライダーのそんな思惑が聞こえてくるようだ。

「ドゥカティらしさ」を取り戻したネオクラシック

もっとも、フルパワー状態でも110ps/9250rpmゆえ、223kgの装備重量に対して、手に余るほどではない。少なくともアスファルト上では、コントロール下に置くことができ、スポーツを選択したところで、ビギナーを切り捨てるようなキャラクターではない。

とはいえ、一応色々なライディングモードを用意し、ライダーに寄り添っている感を出しつつも、本質的にはスポーツライディングありき。その清々しさが心地よかった。ライダーにおもねるのではなく、ドゥカティが考える理想にライダー側が合わせてもらう、あるいはそこに至れるようにいざなう開発姿勢が見て取れた。だからこそ、「マシン」として美しく、洗練されている。

思えば、かつてのドゥカティはほとんどがそうだった。このデザートXには、あの頃の心意気が感じられ(現行モデルではハイパーモタード950SPもそうだ)、なんだか心地いい。おかえりなさい、とそんな気分。単なるスタイリングではなく、「らしさ」を取り戻したという意味のネオクラシックと言える。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★

フットワーク:★★★★

コンフォート:★★★

足着き:★★

オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト

1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

記事提供:レスポンス

掲載に関する免責事項について
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。

価格.comで最新価格・クチコミをチェック!

ドゥカティのバイク(本体) ニュース

もっと見る

このほかのバイク(本体) ニュース

もっと見る

自動車・バイクニュースランキング

  1. ホンダ・モトコンパクト

    ホンダ『モトコンポ』が電動スクーターとして再来…ハンドルやシートを折りたたんで運べる

    バイク(本体)
    2023.09.19 09:15
  2. レクサス LBX COOL(プロトタイプ)

    小さいけどエントリーモデルじゃない、レクサス『LBX』日本初公開 秋以降導入へ

    自動車(本体)
    2023.09.20 12:48
  3. マツダ CX-30 の「カーボンターボ」(米2024年モデル)

    マツダ『CX-30』に「カーボンターボ」仕様を新設定

    自動車(本体)
    2023.09.20 13:16
  4. DAMD JIMNY little G. TRADITIONAL

    レトロなジムニー用新作ボディキット「little G. TRADITIONAL」発売…ダムド

    自動車(本体)
    2023.09.19 10:51
  5. 2024年中の日本導入が発表されたレクサス『GX』

    レクサス『GX』日本導入へ、ラインアップ一気に拡大 次世代BEVはモビリティショーで公開

    自動車(本体)
    2023.09.20 11:21

総合ニュースランキング

  1. 「メビウス・アロマリッチ・レギュラー」

    Ploom Xより「メビウス・アロマリッチ・レギュラー」が本日9月19日から順次発売

    電子タバコ・加熱式タバコ
    2023.09.19 00:00
  2. 「S.H.Figuarts スーパーサイヤ人孫悟空-伝説のスーパーサイヤ人-」

    「クリリンのことかーっ!!!!!」も再現可能、スーパーサイヤ人孫悟空がS.H.Figuarts化

    フィギュア
    2023.09.19 16:50
  3. 「iPhone 15 Pro」「iPhone 15」

    ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル、「iPhone 15」シリーズの販売価格を発表

    スマートフォン
    2023.09.19 12:46
  4. ニコン Z f

    ニコン、「FM2」をモチーフにした有効2450万画素のフルサイズミラーレス「Z f」

    デジタル一眼カメラ
    2023.09.20 14:01
  5. ES-K10B

    シャープ、マイクロ高圧洗浄&節水を実現したプラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機

    洗濯機
    2023.09.20 11:28

読んでおきたい まとめ記事

自動車

カー用品

バイク

写真で見る

  • 「MGSD ガンダムバルバトス」
  • 「折りたたみフットパネルヒーター LCAWA002」
  • 「iPhone 15 Pro」「iPhone 15」
  • 「Xperia 5 V」
  • 「RELX MagicGo(リレックス・マジックゴー)」
  • ADR-3TCMSD11S