2018年07月13日 14:29

絶賛の新型「ホンダ CB1000R」に欠けている何か、とは…のしかかる“CB”の称号

◆素晴らしい。でもキーワードが見つからない

ホンダの新型『CB1000R』が4月に発売されてから3か月が経ち、新車フィーバーも一段落してきたところで改めて再考してみたい。

CB1000Rは「スポーツバイクの根源的な楽しさ」を追求したスポーツネイキッドモデルだ。従来型『CBR1000RR』の水冷直4ユニットをマス集中した軽量ホディに搭載し、ライディングモードをはじめする先進的な電子制御をふんだんに盛り込みつつ、今までにない斬新かつ上質なスタイリングで仕上げられているのが特徴だ。

巷の評判では、元気なエンジンと軽快なハンドリング、上質感あふれるエクステリアなどが絶賛されているが、自分としてはいまひとつ心に刺さってくるキーワードが見つからない。「大人のための〜」と片付けてしまうと何か逃げているようで釈然としない。自分自身、メディア試乗会では予想を上回る出来の良さに興奮し、冷静に見れなかった部分もあったが、しばらく時間を置いてみて思うところがあるので綴りたい。

◆CBの異端児と呼ばれたホーネット900という存在

「何かに似ている」という感覚をずっと持っていた。記憶を辿ってみるとそれは、ずいぶん昔に乗ったことがある『CB900ホーネット』(ホーネット900)だった。国内では2001年からたった3年間しか売られなかったこともあり、CBの歴史上でも埋もれてしまった感があるモデル。250、600、900を揃えたいわゆるホーネット3兄弟の長兄で、エンジンは初代「ファイアーブレードCBR900RR」系の水冷直4エンジンで元々がSSらしい俊敏に吹け上がる回転馬力的なパワーと200kgちょっとのスリムな車体を生かした軽快なハンドリングが持ち味だった。

フレーム構造も新型CB1000Rにつながる鋼管角断面モノバックボーンタイプで、車体センター付近でしなやかに捩じらせて曲がる感じが似ていた。ネイキッドなのにセンターアップマフラーでシングルショックを採用していたり、と当時の正統派ビッグネイキッドだった「CB1000SF」やその後継の「CB1300SF」とは距離を置いた異端児のような存在だった。

◆スポーティなのに扱いやすく感じが似ていた

自分は当時、ホンダのトレーニング施設で取材をかねてよく練習させてもらっていたので、当時の教習車だったCB1000SFや初期型CB1300SF、そしてホーネット900を乗り比べる機会も多かった。

ホーネット900は他のビッグCBに比べると圧倒的に軽く、スラロームなどもクルクル曲がるし取り回しも楽。スポーティなのに扱いやすく、大型二輪ビギナーにも馴染みやすいモデルだった。対するCB1000SFは“ビッグワン”の異名をとった威風堂々としたマシンで、前後18インチによる豪快なハンドリングが持ち味。乗りこなすのは難しかった。

一方で初期型CB1300SFはCB史上で最もヘビー級な巨漢マシンで、ホンダの直4クルーザーとして大ヒットとなった「X4」がベースなだけに、車重も275kgとそれはもう重厚感の塊。ハンドリングもまったりとクルーザー的で、これを機敏に操ってスラロームさせていくには腕で体力も必要だったが、逆に言うと上手く操れたときの達成感は大きかった。これは今のCB1300SFにも通ずる部分だ。

◆欠けている何か…それは「ヒストリー」だ

話がだいぶ遠回りしてしまったが、新型CB1000Rのルーツにはホーネット900があり、双方ともスーパースポーツ系エンジンを使い、バイクのパフォーマンスとしては優れているが、ぐっとくる何かが足りない感じ。それが何なのか? とりわけ、新世代のCB1000Rにいたっては高精密な電子制御がテンコ盛りでフィニッシュも高級感があるし、乗り味も最高にエキサイティングなのに……。

何故だ何故だ、とずっと考えて辿り着いた結論。それはヒストリーではないか。

ほぼオールニューなので当然と言えば当然だが、ルーツを辿ればホーネット900から旧型CB1000Rを経て今回の新型に至るまで20年近い年月が流れている。そこに残念ながら歴史的な逸話やストーリーがなかった。CBの称号は重い。バイク乗りなら世界中誰でも知っているし、その栄光の歴史の前に説明は不要だ。CBの熱狂的ファンのみならず、一般のバイク好きにも新型CB1000Rが未だCBの仲間と見なされていない気がするのは私だけだろうか。それともCBという名がそうさせるのか。

プロダクトとしては文句のつけようもないほど良いバイクを作ってくれた。だが、そこに惚れ込める魂の拠り所のようなものが欲しいのかもしれない。昔と違い、レースと量産モデルが直結しにくい現代において、栄光のヒストリーを描いていく作業は難しいと思う。でもそれがレースの成績だけではないことは、『ゴールドウイング』や『スーパーカブ』が物語っている。

ではCB1000Rの場合はそれが何なのか。CB1000Rが名車として記憶されるかどうかは、これからの歴史をどう刻んでいくか、にかかっている気がするのだ。

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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