【ヤマハ SR400 試乗】昭和レトロなキックスタートも時代を超えた贅沢だ…青木タカオ
初期型誕生は昭和53年(1978年)だから、平成を丸ごとすべて経て、ついに令和へ突入。40年以上ものロングセラーを続けているのだから頭が下がる。
同じ年に生まれたモノといえば「赤いきつねうどん」と「緑のたぬきそば」であったり「ボンカレー・ゴールド」といったお茶の間でお馴染みの食品たちだが、『SR』はオートバイだからなおさらスゴイ。というのも、40年の間には環境規制などが厳格化し、それらにひとつずつ対応していけば、どうしても“カタチ”は変わってしまいがち。
しかし、「SR」のフォルムはほぼ変わっていない。フューエルインジェクション化など止む得ないところは進化しているものの、いまだにキックスタートオンリーであるなど“変わらないこと”に対するこだわりようはとてつもない。カップ麺でさえも、時代に合わせて味を変えるというのに……。
もちろん詳しいバイクファンが見れば、前輪は19か18インチか、キャストホイールであるかスポーク仕様か、ブレーキは前後ドラムかフロントディスク式か、あるいは吸気機構が強制開閉式か負圧式のキャブレターか、それともFIかなど細かな違いはあるが、極端なことをいってしまえば、どの時代のSRもパッと見ではみんな一緒である。
◆誰が見てもすぐに“SR”とわかるフォルム
2019年式もやはり、同じだ。じつは2017年から1年ほど生産がストップしていた時期があり、それもまた排出ガス規制に適合させるためであった。新型には蒸発ガソリンの外気排出を低減するキャニスターがクランクケースの前方に備わり、さらに環境性能と燃費を向上するO2フィードバック制御の精度が上がっている。
エンジンスタートはお馴染みのキックスタートだが、やり方を知っていれば苦労しない。ハンドル左側に“デコンプレバー”なるものがあり、これを使えば簡単に始動できるのだ。
“デコンプレバー”を握ったら、エンジン右側にある“インジケーター窓”を見ながらキックアームをゆっくりと下ろしてみると、丸い窓の中にマークが見える。そこが圧縮上死点であり、あとはキックアームを勢いよく踏み込むだけ。おそるおそるだとクランクの回転が遅くて始動しない。一番下までしっかり踏み込むことを意識すると、自ずとキックスピードが上がるだろう。
慣れてしまえば、デコンプレバーを握るのも窓をのぞくのもしないまま始動でき、こうした"目覚めの儀式"もまた「SR」の面白さに変わっていく。だからこそ、セルスターターを搭載しないままにしている。手間や時間をかける楽しさ、それは贅沢なことでもあるように思う。
◆旧車然とした重厚感や鈍さはない
フロントまわりをブルブルと震わせながらアイドリングしている姿は、愛おしくなってくる。FI制御によってアイドリングは安定していて、排気音を聴きつつ眺めているだけでもう高揚感がある。
鼓動感タップリで、ゆっくりと回っていくエンジンをイメージする人もいるが、ショートストローク設計のSOHC2バルブエンジンは、タタタッ! と7000回転超まで軽やかに回っていく。軽快なハンドリングもあいまって、決して旧車然とした重厚感や鈍さはない。
新型では排気音に迫力が増し、歯切れの良さが際立つ。心地よいサウンドのために音響解析技術が用いられ、マフラー内部構造を刷新したことによるもの。より味わい深い、いい音だ。
◆細部の質感を向上し、成熟の域へ
スプリング荷重を見直し、クラッチレバーも軽くなっているし、ハイクオリティを長期間維持できるようエンジンのシリンダーボディやヘッドカバー類には塗装処理を、クロームメッキ仕上げのマフラーには“ナノ膜コーティング”が施され、熱による変色や錆による劣化を防いでいる。
クラシカルなムードの二眼メーターや美しいアールを描くフェンダー、誕生年“SINCE1978”のロゴをあしらったサイドカバーも上質で、細部に至るまで徹底したこだわりを持ってつくられていることが、見て触れて乗ればわかるだろう。「SR」は時代が経つにつれて、ますます輝きを増している気がしてならないのである。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
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