2019年08月26日 06:30

【モトグッツィ V85TT 海外試乗】80年代スタイルが心地いい!“癒し系”冒険マシン…佐川健太郎

『V85TT』はモトグッツィ伝統の縦置きVツインを搭載するアドベンチャーモデルである。かつてダカールラリーでも活躍した「V65TT」を彷彿させるネーミングと古典的スタイルが与えられているが、その中身は最新テクノロジーが投入された現代のマシンである。

◆古き良き時代を思わせるユルさがいい

アイコニックな丸目2灯にくちばし状のフェンダー、丸みのあるビッグタンクなど、80年代ラリーマシンの雰囲気を再現したスタイルに癒される。実車は写真のイメージよりコンパクトで、Vバンクが外側に開いた独特のエンジンレイアウトのおかげで車体自体はスリムなのが特徴。

加えてシート高も830mmと低く、アドベンチャー系としては足着きの良さは抜群だ。シート形状もツーリングに適した座りの良いタイプ。ロングタンクの先にあるハンドルに手を伸ばす、ゆったりしたライポジも含め、古き良き時代のラリーマシンを思わせるユルさがまたいい。

モトグッツィと言えばやはりエンジンだ。空冷縦置き90度Vツイン+シャフトドライブという唯一無二のレイアウトはそれだけで個性的だが、注目すべきは完全新設計であること。排気量853ccは数値的に既存のV9ボバーと同じだが、バルブの改良や軽量クランクの採用などで、最高出力も55psから80psへと大幅にアップ。空冷OHV独特の柔らかな鼓動感はそのまま、よりスムーズでパワフルになった。

◆進化した足まわりがもたらす現代の走り

国際試乗会はタイの観光地、プーケット島近くで行われ、市街地からワインディング、ダートを含めた多様なシチュエーションで試してみたが、その走りは極めて現代的だった。高速コーナーでもハンドリングは素直で安定感があり、車体を通じて剛性感もしっかり伝わってくる。良くも悪くも先代アドベンチャーモデル『ステルヴィオ1200』などに見られたフワフワ感がなく、ちょっと乱暴な入力をしてもビクともしない安定感が印象に残った。

足まわりの進化も大きい。ブレンボ製ラジアルキャリパー搭載のダブルディスクブレーキは強力かつ速度調整もしやすく、滑りに対してはABSやトラコンも素早く介入してくれる。オフロード走行を想定したストローク量170mmの前後サスはスムーズな動きで守備範囲も広く、荒れた路面でもきれいに吸収してくれる。フロント19インチ&リヤ17インチの大きすぎないホイールと太過ぎないタイヤのおかげもあってか、軽快でクセのない走りを楽しめた。

◆予想していた以上にオフロードも本格的

そして、驚いたのがオフロード性能の高さ。試乗する前は雰囲気重視と思っていたが、意外や意外。日本の林道のようなジャングルの小道でも、スタンディングでスロットルを開けてさえいれば積極的に走破できるし、前輪が半分沈む深さの沢渡りも簡単にできてしまった。

その気になればブレーキターンや後輪を滑らせて向きを変えたり、といったアドベンチャーらしい走りも可能。排気量とパワーと車格のバランスが丁度よく、穏やかなエンジンとハンドリング特性のおかげでライダーが順応しやすいのだ。

加えて頼りになるのが電子制御。3種類のライディングモード(Road、Rain、Off-road)が走行中でも切り替え可能で、たとえば「オフロード」を選択すれば、パワーは穏やかになりABSとトラコンも自動的に最適化される仕組み。非常にシンプルで分かりやすい、“使える”システムだ。

このクラスとしては軽量コンパクトなので街乗りから使えて、荷物を満載したロングツーリングはもちろん得意。旅先での林道遊びも含め幅広い楽しみ方ができるマシンだ。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★

ハンドリング:★★★★

扱いやすさ:★★★★★

快適性:★★★★★

オススメ度:★★★★★

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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