2020年04月30日 06:20

【ドゥカティ パニガーレV4S 試乗】ウェットでも垣間見えたスーパーバイクの片鱗

皆様こんにちは。プロレーサー、テストライダー・ドライバーの丸山浩です。本日は遂にMoto GPマシンのようにフロントにウイングレットを手にいれたドゥカティ『パニガーレV4S』のインプレをお届け。

2018年初登場時にはヴァレンシアサーキットでテストしたのですが、ストリート試乗は今回が初めて。そしてウイングの効果を体感すべく、筑波サーキットにも乗り込みますよ!

◆ウイングだけじゃない!細かい部分もアップデートされた新型V4S

パニガーレV4Sについてはド派手なウイングにばかり話題がいきがちだけれど、今回のアップデートでは細かいところにも手が加えられている。例えばフロントフォーク突き出し量を4mm減少。リアショック長は2mm、併せてリンクロッドも5mm短縮し全体車高をアップして運動性を向上。結果としてシート高は5mm上がって835mmに。フロントフレームはV4R同様の穴開きタイプとし、深いバンク角でのハンドリングを向上。更にフェアリングをワイド化したとのこと。

跨ってサイドスタンドから引き起こすところから既に「スーパーバイク来たな〜!」とテンションが上がる、なんともヤル気に満ち溢れた腰高ポジション。拡大されたフェアリングも相まって、以前よりも一回り大きくなった印象だ。シート高も数字上ではさほど高いものではないが、実際は腰下の幅があって足が両脇に出るので、身長168cmの私だとツンツン、両つま先の腹が付かないレベル。ステアリングまでの距離も遠くはないが、高さも腰骨同等なのでスーパースポーツらしいしっかりした前傾姿勢となる。

これと比較して18年の初代はV4エンジンにも関わらず、ドゥカティらしいVツインのスリムなボディーワークに近づけるように頑張って作り込まれていた。この変化は、昨年Vツインの旗艦としてパニガーレV2が登場したことが大きいだろう。程よいパワーと軽量スリムなVツインエンジンのパッケージが生む自由自在のコーナーリング、というドゥカティ伝統のアイデンティティを一つの系統として確立させたからこそ、V4は割り切ったスペック至上路線へと舵を切ることが出来たわけだ。

◆信号待ちのたびに4気筒なのにドカドカしいエンジンの鼓動

街中に走り出してみるとやはり、V4Sは荒々しい。エンジン始動時からエンジンサウンドは激しく、走行中こそ排気バルブで音量を調整してはいるものの、交差点で信号待ちの度にドカドカ主張するサウンドに「あぁ、とんでもないマシンに乗ってるなぁ」としみじみ実感させられる。

そう、4気筒なのにドカドカしいのだ。なお、水温85度以上かつギアニュートラルの条件下となると主に熱対策でリアバンク2気筒を休止するシステムも搭載されているのだが、ともすれば延々2気筒なんじゃないかと思えるくらいのドカドカっぷり。これは爆発タイミングの調整による演出なのだそう。パワーも走り出しからドンと出るので、半クラから緊張感満点。重心も高く、渋滞や裏路地などの足を頻繁に付くシチュエーションでは、私の身長だとジタバタせざるを得ない。

とはいえ200kg切りの軽量マシンなので、走り出してしまえば安心感は一気に高まる。走行中、ハンドル・ステップ・シートの位置関係はスーパースポーツの中ではかなりバランスが良く、またステアリングの絞り&タレ角も絶妙なので、低速でも手首に負担がかかりににくい。

◆高速道路ではまろやかな4気筒フィーリングにガラリと変わる

高速に入ると、今までVツインのようにドカドカだったエンジンフィールはガラリと変わり、途端に4気筒らしいまろやかな雰囲気が出てくる。どこからでもレスポンス良く付いてくるV4特性と相まって、優しく滑らかに吹け上がるエンジンは実に極上だ。流れに乗って巡航しながらギアを変えてみたり、料金所やジャンクション合流でのちょっとした加速でも、スーパーバイク最高峰スペックを十分に堪能することができる。

ストリートでV4Sを楽しむなら、できるだけ早めに郊外に抜け、高速をバビューンと駆け、ワインディングを気持ちよく流すプランが良さそうだ。どのステージをとってもスーパーマシン感マシマシ、どこまでもオーバースペック。その超越感と優越感こそが、ストリートでV4Sを走らせる醍醐味だろう。

◆V4Sの実力をフルに発揮するならサーキット一択

ならばV4Sの実力をフルに発揮できる場所はどこかといえば、サーキット一択。そして新装備・ウイングレットの真価を羽ばたかせる時がやって参りました!270km/hで30kgの荷重を生むというこの翼。浮き上がるフロントを直接抑え込むことで、ウイリー制御によるエンジン出力抑制を最小限にするという。つまりは高速コーナー立ち上がりで、モアパワーの鋭い立ち上がりを可能にさせる代物というわけだ。筑波なら最終コーナーからの立ち上がりが最も効果を発揮できるだろう。というわけでお待ちかね、筑波サーキットインプレにレッツゴー!

…雨です!

朝は晴れてたのにおかしいなぁ。風も強くなって気温まで下がっちゃって、多分走行中が一番雨量凄かった。コースから戻ってきた私は今、寒さに震えております。はっきり申し上げましょう、どウェットかつノーレインタイヤ&ノータイヤウォーマーのこの状況下で、ウイングの効果なんかさっぱり発揮できません!いやはや、さんざ引っ張っておいて空振りで申し訳ない。天候ばかりはどうすることも出来ませんでね。しかしながらフルウェットとはいえ、クローズドコースにおける新型V4Sの実力の片鱗を確認してきました。

◆ウイングレットの効果は体感できずとも、垣間見えたV4Sの実力の片鱗

モードは全セッション通してSPORT。全体的にかなり速度を落とさざるを得なかったのだが、エンジンフィーリングは全域がスムーズ。特にヘアピンからの脱出時、クッとアクセルを開けるところでは、V4らしく滑らかにパワーが出てくるので、雨の中でもキレイに立ち上がっていける。これが大排気量Vツインだと、アクセルを開けた瞬間炸裂するパワーにドンと押し出されるため、とりわけこのコンディション下では曲げたい方向に曲げるのは難しかっただろう。ストリートレンジとはキャラクター一変、クローズドコースでの開け始めのアクセルレスポンスの優しさは、そのまま扱いやすさへと直結する。

立ち上がりから先はV4特性全開でシームレスに吹け上がり、回転数上昇に伴いパワーもぐっと盛り上がってくるのだが、やはりこの雨量では途端にリアホイールが空転してしまう。特にバックストレートは終始ホイールスピンしっぱなしで、そのままストレートエンド200km/h以上のところまで続いていた。

ハンドリングは軽く、全体をして素直で乗りやすい印象。扱いやすさとポジションのバランスの良さも相まってか、ストリートでは大柄で圧迫感も感じたボディサイズも、クローズドコースではコンパクトなスポーツバイクに思えた。

しかしだ、V4Sに装着されたゴリゴリのハイグリップタイヤは、流石に気温6〜7度のフルウェットでは如何せん温まらない。直線でどれだけアクセルを開けても、コンパウンドはカッチカチのまま。トラコンが入っていようが、コーナー進入のシフトダウンの度にリアが踊ってしまう。まるで氷上のようなライディングを強いられ続けているうちに、走行時間は終わってしまった。無念。

今回のテストでは、ニューV4Sのポテンシャルを出し切ることは出来なかった。しかし見た目のインパクトとは裏腹に、リファインされたハンドリングは扱いやすさを高めた方向性であることは確認出来た。このコンディションでここまで走れたのだから、ドライでの実力には期待が高まる。

高速コーナー、具体的には150km/hあたりから加速していくようなところでは、フロントウイングが効力を発揮して更に開けやすくなるのだろうか。これは是非ともリベンジマッチを挑みたいところ。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★★

フットワーク:★★★★

コンフォート:★★

足着き:★★

オススメ度:★★★★

丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー

1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。

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