2020年06月01日 06:20

【ヤマハ TMAX560 TECH MAX 試乗】ただのスクーターだと思ったら大間違い

2001年にヨーロッパで販売を開始したヤマハ『TMAX』は、市街地からワインディングロードまで対応する「オートマチックスーパースポーツ」という独自の新ジャンルを開拓。

販売台数は3年で4万台を超える人気モデルとなり、その後も現在までモデルチェンジを繰り返しつつロングセラーを続けている。

日本でも2001年8月から発売し、「ぱっと見はスクーターだけど、オートマチックスーパースポーツとはなんだろう?」と懐疑的だった国内のユーザーも、ビッグスクーターとは一線を画す運動性能の高さや快適性で理解を広め、あっという間にファンを獲得していった。

スクーターとなにがそんなに違うのか? 念のために説明しておくと、一般的なスクーターはリアのスイングアームユニットにエンジンを搭載する(ユニットスイングと呼ばれる)が、TMAXはスポーツバイクと同じようにフレームの真ん中に並列2気筒DOHC4バルブ500ccエンジンを積み、ベルトドライブ&スイングアーム方式を採用して前後の重量バランスを最適化している。運動性能に直結するバネ下を軽量化できるし、サスペンションも効率よく動くなど、メリットがたくさんあるのは想像に容易いだろう。

「TMAX」は走りの性能を追求し、シャシーを2008年式でヤマハ独自の“CFアルミダイキャスト技術”で製造した軽量アルミ製フレームにしてしまうからバイクファンは驚いた。

フロント14インチだった足まわりを前後15インチ化し、ラジアルタイヤを履き、フォークオフセット(35mm→30mm)、キャスター(28度→25度)、トレール(95mm→92mm)と、もはや見た目こそ“大きなスクーター”だが、走りはスーパースポーツなみ。これぞ「オートマチックスーパースポーツ」とTMAXはとことん突き抜けていく。

欧州でも日本でも人気を盤石なものとすると、今度は2013年「TMAX530」として、低中速域から太いトルクを発生する新530ccエンジンを採用。もはや賢明なライダーなら知っていた。たとえば、ワインディングで後続に「TMAX530」がいると分かれば、「なんだスクーターか」などと侮ることは決してできず、道を譲るしかないのだ。なんせ、難しい操作の要らないオートマチック、速いに決まっているのである。

通勤で原2スクーターが最速なように、アクセルをワイドオープンできるような環境になれば、とてつもない運動性能を発揮する。

◆7代目は560ccエンジン搭載、上級版がTECH MAX!!

しかし、ヤマハはまたしてもTMAXをフルモデルチェンジさせ、排気量をさらに32ccアップした新設計561ccDOHC4バルブエンジンを搭載。7代目となる「TMAX560 ABS」が5月8日に発売した。

さて、ようやく本題に入る。今回、クルーズコントロールシステム、電動調整式スクリーン、グリップウォーマー、シートヒーター、調整機能付きリアサスペンションを備えた上級バージョン『TMAX560 TECH MAX ABS』に乗った。

吊り目のフロントマスクは精悍になったもののMAXシリーズの共通イメージで、目を引くのはコンパクトなLEDフラッシャー。通称“ブーメラン”と呼ばれるサイドカバーやリアサイドカバーなど、外装がよりスタイリッシュになった印象で、テール&ストップランプは「T」をモチーフにしている。

市街地では持て余すほどにパワフルで、まずダッシュ力が凄まじい。今回、撮影は街の中でおこなったが、郊外の広い道路に出ると、ようやくそのポテンシャルの高さを少し垣間見れるといった感じ。中高速域からの加速特性が向上しているのだ。

ワイドオープンでその性能を堪能したいのなら高速道路、いや旋回性能にも優れるからサーキットに持ち込むべきだろうと思うほどに、エンジン、足まわりともに高い速度レンジをウェルカムとしている。

しかし、ゆったり流すのが苦手かと言えば、そうではない。インナーチューブ径41mmの倒立フォークとリンク式モノクロスサスペンションは路面追従性に優れ、速度域が低いときはしなやかに動いて乗り心地がいい。欧州の石畳の道で鍛え抜かれたTMAXだから、こちらでも石畳の道を走ってみるが、衝撃吸収性も良く車体は落ち着いたまま。トラクションコントロールも搭載し、試乗中に小雨も降ったがスリッピーなところも不安なくアクセルを開けていける。

撮影日は気温も低めで、グリップウォーマーだけでなくシートヒーターの恩恵にも預かれた。こうした装備は寒い欧州を意識したものだが、日本の冬も同様にかなり冷えるから、これはありがたいとしか言いようがない。

「TMAX560 ABS」が127万6000円、TECH MAXだと141万9000円(いずれも税込み)となるが、盛り込まれた装備は“使える”ものばかりなので、ヤマハはしっかりリサーチし、上級版をリリースしてきたことが想像できる。

この“羊の皮を被ったオオカミ”、ヨーロッパでも日本でも、また多くの人を虜にしそうだ。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★

フットワーク:★★★★★

コンフォート:★★★★

足着き:★★★

オススメ度:★★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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