2020年06月15日 09:45

【カワサキ Z H2 公道&サーキット試乗】気軽に毎日乗れるスーパーチャージドマシン

皆さんこんにちは。プロレーサー、テストライダーの丸山浩です。本日は最高出力200馬力!1000ccのスーパーチャージャー搭載バイク・カワサキ『Z H2』のインプレをお届けします。

こちらでは普段バイクに馴染みのない方にもご覧頂けるでしょうから「バイクにスーパーチャージャーってどうなの?」というところから解説を。いやそれはもうとんでもないですよ。

◆世界中が注目したカワサキのスーパーチャージドマシン

カワサキが2種類のスーパーチャージドマシンを世に送り込んだのは2015年。公道仕様の『Ninja H2』は1000cc直列4気筒・最高出力200馬力というスペック。1000ccスーパースポーツという最もサーキット戦闘力の高いジャンルで概ね200馬力前後だから、まぁそれくらい出せるよね、と思うのは間違い。リミッター解除版・クローズドコース専用の『H2R』に至っては310馬力という化け物スペック。

加えて高速域では、走行風圧で吸気効率を上げるラムエアシステム分のパワーが上乗せされる。基本的にH2はRに蓋をしただけのようなものなので、過渡特性は似たようなもの。このぶっ飛びっぷりに、当然世界中のバイク界隈は大注目。私自身何度も0-1000mや最高速アタックに挑んだが、そのキャラクターはかつて無いほど強烈だった。

スタートから過給が効いた瞬間、フロントはどこに行くか分からないほど跳ねまくり、300km/hを超えてもまだまだ加速していく。まるで「乗れるもんなら乗ってみろ!」と言わんばかりの暴れん坊。一方、電子制御系の発達した現代では、超オーバースペックをセーブしつつスーパーチャージャーの特性を楽しむことも出来る。そうしたバランス感が好評で、18年にはツアラー版の『H2 SX』というモデルも登場した。

そしてスーパーチャージドシリーズ第3弾となるのが、このZ H2だ。カウルを取り払ったネイキッド、中でもアグレッシブな走りに振ったストファイ(ストリートファイター)と呼ばれるジャンルに属する。果たして200馬力のパワーでストリートを楽しくファイトできるのか、そんなところを早速インプレしていこう。

◆化け物スペックなはずなのに、ストリートでも気軽に乗れる

まずは取り回し。車重は240kgと、同系統のマシンと比べそれなりに重量はあるものの、やはりH2やSXから装備類を解除した変化は大きく、押し引きも楽。特にまたがる際、サイドスタンドからの引き起こしが数字からくるイメージよりも軽い。よしよし、ちゃんとストファイらしいじゃないか。

シート高は830mm、身長168cmの私で両つま先親指の腹が付くレベル。ステップはさほどバックもアップもしていない楽な位置。タンクは横方向のボリュームはあるが縦方向はコンパクト、ちょっとだけ前傾すればハンドルに手が届く。ハンドルバーはストファイとしてはコンパクト。マシンをねじ伏せるべく横に広いハンドルとすることが多いのだが、コイツは肩幅から拳半分くらい外に出る程度。絞りもそれほど、タレ角も殆ど無く、フラットなハンドルポジションだ。

乗車姿勢はどちらかというとツーリングツアラーっぽい感じ。もうちょっとハンドリングが低かったらスポーティーさは出るだろうけど、この方が街乗りバイク的な感じでとっつきやすい。ステアリング切れ角も大きく、Uターンも楽にできそうだ。

さてエンジンを掛け、まずは市街地を抜ける。うむ、やはり走り出しから、やはり常に軽さが際立っている。車体ももちろん、エンジンも高性能さを堪能できる、レスポンスの良い軽い吹け上がり。シフトフィールも同様、オートシフターは低回転域でもきちっと動作するので、クラッチレバーを握るのは止まるときだけ。そのクラッチも200馬力を受け止める容量とは思えないほど軽い。ブレーキタッチは前後共にスーパースポーツより優しい効き。足回りも柔らかめで前後に揺さぶってみるとよく動く、運動性の良いパッケージ。

Ninja H2では街乗り領域からヒュルヒュル主張していた肝心のスーパーチャージャーはと言うと、いまのところ平穏。4000rpmあたりからタービンの回転音は聞こえ始めるが、吸気音の気配はまだ無い。なにより3000rpm以下でもトルクフルなので、そこまで回さなくても十分。恐らく、H2ほど圧縮を落として過給を稼ぐスタンスでは無いのだろう。化け物スペックのはずなのに、きちんと普段乗りの雰囲気でも気軽に乗れるよう創られている。

ちょっと気になるのが、フレームにヒザが当たるところ。ジーンズタイプのライディングパンツでニーグリップすると、やや痛い。もうちょっとタンクを挟めると良いのだが。私の足の長さが足りないという眉唾な説もあるが、全体としてのポジションは楽に乗れるので良しとしよう。

お次は高速。いよいよスーパーチャージャーの本領発揮、5000rpmあたりでお待ちかねの“ヒュルンッ”というサウンドが聞こえ始める。面白いのは6000rpm以上、これぞスーパーチャージャーと言うべき急激な加速感が味わえる。1つギアを下げてアクセルを開けるだけでポンポンフロントが上がるほど、強引なパワーの立ち上がり。これこれ、これを待ってたんだよ!NAには無い緊張感が何よりの魅力。

因みにこれはスポーツモードでの話。ロードモードに切り替えれば、アクセルのツキが少し穏やかになって走りやすくなる。パワーを落とすというよりは、200馬力までの過渡特性を抑えている印象だ。普段流す時はロードモードで、たまにスーパーチャージャーを堪能したいときにスポーツにすれば、アクセルワークのシビアさに疲弊することもないだろう。

メーターには短いバイザーが装着されてはいるが、ネイキッドらしく走行風は胸元全体に受ける。一方、車体正面右側の吸気ダクトと、その造形に合わせたフェアリングによる整流効果は高く、腰下への走行風はきちんと受け流されている。それにより、高速走行は思いのほか楽。因みに、これらライト回りの構成物がフレームマウントとされていることも、軽いハンドリングを生む一助となっている。

◆サーキットで全開アタックしたらやっぱり暴れん坊だった

高速をカッ飛び向かった先は、千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイ。全長約2.4kmのサーキットだ。アップハンドルの200馬力を全開走行したら、一体どんなフィーリングになるのか。もちろんサーキットで競うキャラではないので、タイムをどうこう言うつもりはない。きちんと安全にテストするため、私はいつもサーキットでテストしているのです。それではレッツ、全開アタック!

結論、コイツも紛うことなき暴れん坊だった!想像通りでしょうが、フロントを浮かせないようにするのが大変。シフトアップするごとにフロントが浮いてきてしまう。ただ電子制御がうまくコントロールしてくれるので、コーナー立ち上がりから地上高30cmのアップ幅に抑えながらキレイに加速していける。ある程度ハイパワーバイクに乗れる人ならきっと「もしかしてオレ、上手くなった?」と思っちゃうくらいハイレベル。しかしこれはあくまで電子制御ありき。今回は事前に許可を得て、試しにトラクションコントロールを切ってみた。

そしたらもう、逆にウイリーするのが大変!何が大変って、上げた先のコントロールが非常に難しい。調度いいパワー域を探りながら、まだ少し足りないかなと回転数を上げていった先、8〜9,000rpmで過給圧が入った途端、ズパーンとフロントが上がる。ピーキーもピーキー、2stバイクなど比べ物にならないくらいのピーキーっぷり。フロントの上がり角は通常アクセルワークでコントロールしているけど、コイツはもう、アクセルを戻しても間に合わない。リアブレーキで抑えるのもギリギリで、ちょっと油断するとあっという間にめくれちゃう。なので皆さん、興味本位でもトラコンは切らないでね!

ハンドリングに関しては、アップハンドルかつストリートに振った特性上、ライダーが前に乗っかってもフロント荷重はさほど高められないので、コーナーをガンガン攻め込めるほど旋回力は引き出せない。今回のベストラップは1分20秒台。コース上に雨が残っていたが、恐らく完全ドライでも18秒に入るくらいか。それ以上プッシュしようとコーナー進入時のバンクスピードを上げていくと、リアが付いてこれずにゴツゴツ跳ねて外に流れていってしまう。これはタイヤ選択においても、強大なパワーを受け止められる剛性と安定性を優先したのだろう。なお、回せば回すほどパワー炸裂かと言うと、あくまで200馬力にとどめている印象。H2のようにものすごい速度域で楽しむマシンではない。きちんとストリートを主眼に置いたマシンであることが確認できた。

ワインディングでも攻め過ぎず、流す程度にコーナーを捌き、直線が来るたび一瞬スーパーチャージするのがコイツの楽しみ方。マシンの軽さやポジションの楽さ、そして電子制御でしっかりコントロールされたパワーフィールは、間違いなくスーパーチャージドシリーズの中で最も気構えずに乗り出せるマシン。それこそ毎日だって乗れちゃうくらいのZ H2には、色んな人にスーパーチャージャーを楽しんでもらいたいという思いが詰め込まれているのではないだろうか。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★★

フットワーク:★★★★(ハンドリング)

コンフォート:★★★★

足着き:★★★

オススメ度:★★★★★

丸山浩|プロレーサー、テストライダー・ドライバー

1988年から2輪専門誌のテスターとして活動する傍ら、国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8耐などに参戦。97年より4輪レースシーンにもチャレンジ。スーパー耐久シリーズで優勝を収めるなど、現在でも2輪4輪レースに参戦し続けている。また同時にサーキット走行会やレースイベントをプロデュース。地上波で放送された「MOTOR STATION TV」の放送製作を皮切りに、ビデオ、DVD、BS放送、そして現在はYouTubeでコンテンツを制作、放映している。また自ら興したレースメンテナンス会社、株式会社WITH MEの現会長として、自社製品、販売車両のテストライド、ドライブを日々行っている。身長は168cm。

記事提供:レスポンス

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