2020年06月30日 06:15

【インディアン チャレンジャー 新型試乗】アメリカンVツインの王座を虎視眈々と狙う挑戦者

インディアンという、誰もが欲しがりそうな伝説的ブランドを買収したのがポラリスで本当に良かったなぁ…とニューモデルである『チャレンジャー』に乗って強く感じることとなった今回の試乗。

1901年にアメリカ最古のモーターサイクルブランドとして誕生したインディアンであるが、数多くの名車を世に送りだすも、20世紀半ばには経営破綻に追い込まれる。その後も復活と倒産を繰り返していたようであるが、それはあまり実態のない会社だったようにも思える。しかし2011年にポラリス社が買収したことで、本格的にモーターサイクル製造カンパニーとして完全復活を成し遂げたのである。

日本ではあまり馴染みのない同社であるが、総合ビークルカンパニーとしての規模は非常に大きく、スノーモービルやATV(All Terrain Vehicle=全地形対応車)の人気が驚くほど高い北米のリーディングカンパニーでもある。そして今回、チャレンジャーに乗って、その確かな技術に裏打ちされた完成度に驚かされたのであった。

◆ワイルドな見た目に反してジェントルなキャラクター

スタイリングはいわゆるバガースタイルと呼ばれるもの。バッグを備えるというということがその語源であるようだが、単純にパニアケースを装備したツアラーとは一線を画するおしゃれな?カテゴリーでもある。

アメリカ製であることに加え、このスタイリングではどうしてもハーレーと比較されることは避けられないと思われるが、新たに開発したV型60度水冷4バルブエンジンを搭載したチャレンジャーは、その名の通り。挑戦者として従来のアメリカンバイクとは異なる走りを持っていた。

360kgという重量は、さすがに軽くはない。足つき性は悪くないながらも、サイドスタンドからの引き起こしや停止状態での取り回しはちょっとした緊張感を伴うものだ。スマートキーによるスタート儀式は、メインボタンを押して準備を整え、セルボタンを軽く一押しするだけである。スタートしたエンジンは必要以上に鼓動感を演出することもなく、きれいにアイドリングしている。

クラッチを握り、ややストロークの大きめのギアを1速にシフト。クラッチが想像以上に軽いことが予想外であったが、それによって高められるクラッチミートの的確性を実感ししつつ、ヘビー級の車体がスッと動き出す。ビッグツインマシン特有の、1発1発の狭間にストンと爆発が落ち込むような不安感は皆無で、非常にスムーズなのが印象的だ。もちろんそこにトルク不足など感じることはなく、1800cc近い排気量の恩恵を感じる。

ワイルドな見た目に反して、ジェントルなキャラクターなんだな。というのが第一印象である。機械としてクリーンな印象であるが、個性がないといった味気なさはなく、非常に気持ちが良いトルキーなフィーリングだ。しかし、アクセル開度を増していくと、弾けるようにパワーが湧き上がってくる。いかにもVツインといったドコドコ感とはまた違ったビートの効いたパワフルさが新鮮である。周囲に大きな音を撒き散らすことなく、ライダーの耳にはしっかりと心地良いサウンドを提供してくれるのも好印象だ。

◆トルクから感じるパワフルさはアメリカンマッスルカー

そして、3段階の設定が可能となるライディングモードも面白い。あまり良くわからないなぁ…と、その変化が感じ難いマシンも少なくないが、チャレンジャーはそれぞれのモードでしっかりとキャラクターを確立している。レインでは穏やかなトルクフルさ。スタンダードはバランスの良いパワフルさ。そしてスポーツモードを選択すると、このエンジンの本領発揮だ。

クラス最大とはいえ、122馬力という出力に数値上の凄みはさほど感じられない。しかしその排気量。トルクから発生されるパワフルさはアメリカンマッスルカーを思わせ、重たい車体を面白いように前にすすめる。一瞬「自分の乗っているマシンはなんだったかな?」と思わせるほどであり、レスポンスも鼓動感も一層際立ってくる。

それでいて、車重による相殺があるのだろう。唐突な動きにはならないことが安心感を生み出すことにつながっている。通常時は必要ないと思われるトラクションコントロールの装備も、雨天時などは不意のホイールスピン等を回避してくれるであろう。装備されて損することはなにもない。

そんなパワフルなエンジンを搭載するアルミ製フレームは、前後のタイヤがウネウネと別の動きをしてしまうような兆候がなく、剛性の高さを感じさせる。もちろん、あまりカッチリし過ぎたフィーリングにはなっておらず、緩さもありつつの剛性感が頼もしさを感じさせるのだ。

◆付加価値も満載だが、それが無くても魅力的な走りのパッケージ

フロントにダブルでラジアルマウントされたブレンボ製ブレーキも、重い車体を確実に止める。バンク角の問題もあり、コーナーを攻めるといったキャラクターではないものの、大柄な車体を感じながら、余裕をもってマシンを操っていくことが出来る。

乗り心地も悪くない。ふわふわし過ぎない、適度に抑制された動きがその走りの質を主張しているかのようだ。高速巡航での快適さとともに、ワインディングも楽しめるクルーザーといえるだろう。

装備の充実も見逃せない。液晶モニターはタッチパネルにもなっていて、グローブを装着しながらもイージーに操作が可能。電動のウィンドシールドや大容量のパニアケース&グローブボックス…高出力スピーカーを内蔵し、クリアな音質で音楽も聴けるといった快適性能を装備する。

しかし、そういった付加価値なくとも、退屈せずに走り続けることが出来そうな魅力的な走りのパッケージングを持っているのがこのチャレンジャー。挑戦者を装いつつ、虎視眈々と王座を狙っているかのように思えてならないのだ。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★★

フットワーク:★★★★

コンフォート:★★★★

足着き:★★★★

オススメ:★★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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