2020年07月06日 06:20

【KTM 890デュークR 試乗】「790」からのプラスアルファは想像以上…鈴木大五郎

並列ツインエンジンを搭載したKTM初のマシン。『790DUKE(790デューク)』はKTMらしいスポーティさを持ちつつ、乗り易さや使い勝手という汎用性をあわせ持ったマシンだった。

サイズ感やちょうど良いパワー等、もしかするとKTMのオンロードバイク史上、もっともバランスの取れたロードマシンであったかもしれない。

一方でKTMもずいぶんと乗り易くなったなぁという声も。最近のKTMはどのマシンも非常にバランスの取れたトータルパフォーマンスを持っており、それはもちろん、まったくもってウェルカム以外のなにものでもないのであるが、もっと過激なものを望む声も少なくない。

そんなアマノジャクの声に応えたのであろうか。

◆レディトゥーレースのDNAをより濃く表した890DUKE R

レディトゥーレースのDNAをより濃く注入して登場したのが『890DUKE R(890デュークR)』だ。790をベースにボア&ストロークをアップし、799ccから890ccへ。シリンダーヘッドヘッドやカムシャフトも改良され、圧縮比も高められたほか、スロットルボディも刷新。それらにより16馬力アップとなる121馬力を発生し、トルクも向上。

電子制御もブラッシュアップされ、5軸から6軸となったIMUにより、コーナーリングABSやトラクションコントロールも、より細かい制御が可能となった。

足回りはWP製に変更はないものの、フルアジャスタブルとなる上級仕様に換装。作動性の良さに加え、あらゆる状況にアジャスト可能なほか、バンク角を確保するため、ショック長も変更。車高も高められている。

跨ってみれば、シート高はやや高めながらも、スリムで軽量な恩恵だろう、プレッシャーはさほど感じられない。790に対し、3キロ軽量となった恩恵もあるかもしれない。ライディングポジションはハンドルバーがやや前方に位置し、ステップも上げられたことにより、少し前傾度が高まったスポーティなものに変更されている。

全体の軽い操作系を考えると、やや手応えのあるクラッチを握り、1速にシフト。テストのメインフィールドとなった富士スピードウェイ・ショートサーキットのピットロードをアイドリング少し上の回転数で走り始めるも、十分なトルクで安定してマシンを発進させた。極低回転域でガクガクしてしまうようなことのないフレキシブルさは790譲りであるが、よりそのスムーズさに磨きがかけられたように感じる。

◆コースに合流し、徐々にその本性を探り始める。

本当に900ccもあるマシンなのか?というほどすべてが軽くてイージーだ。吹けあがり。ハンドリング。なんだかオフロードマシンを操っているかのような軽快さで、すぐに身体がマシンの一部になったかのように感じられる。790に対し明らかにパワフルになった890は、自由自在といった言葉がピッタリなほど、レスポンス良くリズミカルに走らせることが可能だ。

エンジンはフリクションを感じさせないストレスのなさで、どこからでも立ち上がる嫌味のないトルクがそのまま高回転まで一直線に吹け上がっていく。単純にライディングモードを選択し、デフォルトの設定で乗るのも良いが、とくにサーキット走行であるならば、トラックモードの選択をおすすめしたい。パワーデリバリーだけでなく、アクセルのレスポンス具合も細かく調整が可能で流石である。

サスペンションはストローク感のある取っ付きやすいもので、ギャップに対する吸収性も良好であるが、ちょっとペースを上げていくと、STDのセットはやや動きすぎる印象も。オフロードシーンをバックボーンに持つKTMのマシンは、長めのストローク感を持つマシンが少なくない。また、それがKTMらしさとも言われる独自のフィーリングにつながっている面もあると思われるが、ここはスポーツセッティングに変更してもらう。

推奨となるセットアップが提示されているのもKTMらしく、890の持つ細かい調整機構が発揮されるシーンでもある。締めこまれたダンピングにより、明らかにサスペンションの無駄な動きが抑制され、マシンの落ち着きが増して攻め込むことがより可能となった。

新たに採用されたブレンボ製ブレーキシステムは効力はもちろん、コントロール性も素晴しい。ブレーキを引きずりながら倒し込んでいくような微妙なコントロールを容認する。これは採用されたOEMタイヤ。ミシュラン製POWER CUP2の絶大なるグリップ力も大きな助けになっていることだろう。粘っこくなり過ぎることなくことなく、高い安心感を提供してくれる。

9段階&オフ設定の出来るトラクションコントロールも安心感を後押ししてくれる。介入マックスの9では、コーナーリング中の出力が大きくカットされている印象だが、反面穏やかな反応でビギナーにも扱い易い。介入度が最も少ない1では思い通りのパワーデリバリーが得られるが、走行中に大きくマシンが滑ったり出力がカットされるといった唐突な反応は皆無であった。

◆一般道でもちょうど良い軽さとパワー感

サーキットでの走りを堪能したあとに少しだけ一般道に繰り出してみると、これまた軽さとパワー感がちょうど良い。レスポンスがややクイックだったトラックモード(穏やかにも設定可能)をデフォルトでロードに設定すると、フレンドリーさはさらに高まった。

クランク周りを重くしたことの相乗効果か、ギクシャク感のないアクセルレスポンスで、まったり走らせるのも苦手ではない。時間の問題でサスペンションまでSTDのセットに戻すことは出来なかったが、幅広いシチュエーションに対応出来るマシンとなっている。

近年、KTMのマシンは本当に素晴しいものが多いのであるが、この890も想像通りの完成度の高さを誇っていた。890は790に対し、プラスαのエキサイティングさと高級感も感じられたのだ。そしてそのαは想像以上の大きさとなっていたのである。

■5つ星評価

パワーソース:★★★★★

フットワーク:★★★★★

コンフォート:★★★

足着き:★★★

オススメ:★★★★

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

記事提供:レスポンス

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