2020年07月21日 07:00

【KTM アドベンチャーシリーズ 試乗】本気になったKTMは、やはり恐ろしい存在だった…鈴木大五郎

アドベンチャーマシンが世界中で大人気である。

この「アドベンチャーマシン」の定義とはなんぞや?なのであるが、アドベンチャー=冒険などと大袈裟なものではなく、オフロードも走れるツーリングマシンというのが一般的な解釈で良いと思われる。ここが一般的なオンロードオンリーのツアラーとは異なるところだろう。

そんな大人気のアドベンマシンであるからして、メーカー各社から様々なマシンがこのクラスに投入されている。それこそほぼオンロードオンリーでスポーツバイク顔負けの走りを持つものから、オフロード性能バリバリのマシンまで。ただ、オフロードを多少は走れる長めのサスペンションが装備されているのがアドベンマシンの特徴である。

そんななか、オフロードという言葉を聞いて黙っちゃいないのがKTMであろう。同社の得意分野であるオフロードで飛びっきり高いポテンシャルをもったスーパーアドベンチャーは、市場の大多数の声を無視したマシンともいえるが、それは主にフロントホイールに21インチのブロックタイヤを履くRモデルのほうであろう。

◆オンロード寄りのツーリングを想定「1290スーパーアドベンチャーS」

この1290のSバージョンのほうは、ツーリングシーンを想定しつつ、オンロード寄りにセットアップされ、より幅広いシチュエーションでの高い性能を追求したマシンとなっている。

比較的車重は軽いとはいえ、やはり大柄な車格である。停止時はちょっとした緊張感をともなう。しかし走り始めると、そのプレッシャーがみるみる軽減されていく。1301ccV型2気筒エンジンは160馬力を誇り、どこからでも加速体勢に入れるパワフルさと瞬発力をあわせ持っているが、極低速域でのしつけ具合もしっかり行き届いているからこういった印象となるのだろう。

ライディングモードによって、より穏やかなレスポンスにも調教出来る汎用性もある。とはいえ、基本的にはスポーツバイクを思わせるエンジンの元気さがこのマシンの特徴であり、回せば回すほどパワフルになっていく感触は思わず自分の乗っているマシンを忘れてしまうほどである。

アドベンチャーマシンとしては驚異的にパワフルなこともあり、足回りはストロークをしっかり確保しつつも、ある程度硬めのフィーリングを持つ。セミアクティブとなる足回りにより、ダンピング性能をソフト方向に振ったとしても、基本的にはしっかりした手応えが高いスポーツ性能を支えている印象だ。

快適ながら、やはりスポーティでパワフルな刺激を求めたいライダーには、まさにうってつけのマシンとなるだろう。

◆良く出来たデュアルパーパスモデルな「390アドベンチャー」

そんなKTMのアドベンチャーシリーズに、2020年モデルで新たに加わったのが『390アドベンチャー』である。このマシン、なかなかに立派な車格をしているのだが、ベースとなるのはオンロードのスポーツネイキッドマシン、『390デューク』である。ここで僕が想像したのが、アドベン人気にあやかったKTMのビジネスの巧みさ。

既存のプラットフォームを流用して、お手軽にマシンを作る。前後の17インチホイールをF19、R18インチにサイズアップ。サスペンションストロークを伸ばし、リヤのスイングアームも延長。そこにらしい外装を組み合わせれば、見事にアドベン風にイメージチェンジである。しかし、それではKTMのプライドが許さなかったのだろう。

走り始めるとこれが390デュークとは全く異なったキャラクターを持ちつつも、実に良く出来たマシンに仕上がっていると感じさせるのだ。エンジンは400cc近いシングルエンジンのイメージからすると、低回転域での粘りは薄く感じられるものの、ある程度回転上昇してくると、アクセル操作とマシンの動きがぴったりシンクロ。アクセルワークでマシンを操っていける感覚が気持ち良い。

ややガサツな印象もあったこのエンジンであるが、サスペンションのストローク感やシートの座り心地によるものだろうか。390デュークに比べてフィーリングがマイルドで、スムーズにも感じられる。アドベンチャーらしくツーリングシーンでも活きる設定だろう。

ピッチングを活かしながらスイスイと軽快にワインディングを駆け抜けて行く感覚は重厚なアドベンチャーマシンというよりも、良く出来たデュアルパーパスモデルといった印象で、振り回して遊ぶことがイージーに出来る。

OEM採用されるコンチネンタル製タイヤも、見た目のオフロードルックからは想定外の高いグリップ性能とソフトなわかりやすさを提供してくれている。そのうえで、トラクションコントロールも装備と隙がない。

◆見てくれだけのミニアドベンチャーマシンではない。

今回は残念ながら、オフロード走行をする機会はなかったのであるが、オンロード上での走りからイメージして、これはなかなか行けそうだぞ!といった感触を得た。

まず、この車格やスリムさを考えただけでもプレッシャーがない。走破性がどうこう言う前に、まず行くかやめるか?といった判断に、GOサインを出す勇気をくれる。もちろんそれだけでなく、足回りのしなやかさや自由度の高いハンドリングがその可能性を感じさせる。

また、オンロード用だけでなく、オフロード設定のABSも備えるのも本気度の表れ。見てくれだけのミニアドベンチャーマシンにはなっていないのである。

しかしあらためてこのマシンを見れば、実にスタイリッシュではないか。普段の足として使いたいと思わせるスタイリングと使い勝手の良いサイズ感。そこからツーリングやオフロードに行動範囲を広げようとした際の懐の深さ。装備に対するコストパフォーマンスも素晴らしい。

本気になったKTMは、やはり恐ろしい存在だったのだ。

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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