2020年08月05日 06:35

【ハスクバーナ ピレン701シリーズ 試乗】ボルボやイケアだけじゃないスウェーデンブランドの存在感…鈴木大五郎

排気量の大きいシングルエンジンというと、皆さんはどんなイメージを持たれるだろうか?

重ったるい。振動が多い。味わいがある。トルクフル。人によって感じ方は様々だと思うが、ハイパフォーマンスのマシンに多気筒マシンが多いこともあって、パフォーマンス重視といった印象を持たれる方は少ないかもしれない。しかし、ハスクバーナ・モーターサイクルズの『701シリーズ』に乗ってみたら、ビッグシングルに対するイメージが180度回転。そのハイパフォーマンスぶりに少しビックリしてしまうかもしれない。

◆レースがルーツでストリートでは最速ともいえるシングルエンジン

もともと、このエンジンは系列会社でもあるKTMの『690DUKE』に搭載されていたもの。オフロードシーンで4ストシングルエンジンを得意としていたKTMが持っていたLC4(リィキッドクールド4バルブの略)…つまり水冷4バルブという意味を持ったこのエンジンはもともとレーシングエンジンがルーツではある。

しかし、ここ10年ほどで、それが競技志向だったことなど感じさせないエンジンに熟成されてきた。ストリートのシングルエンジン史上、最速ともいえるハイパフォーマンスを持ちながら、普段使い出来るフレキシブルさと信頼性を持っている。

そんなエンジンを搭載したDUKEの車体は、オンロードとオフロードマシンがミックスしたかのような、やや特殊なカテゴリーに属するフィーリングを持っていたが、これも最新モデルではトータルパフォーマンスの高い、スポーツネイキッドマシンに仕上がっていた。そういったベースマシンを持っているのだから、どう料理しようとも悪くはならないはずという安心感が根底にある。

ベースモデルが判別つかないような、何にも似ていないオリジナリティ溢れるスタイリング。人の目を引く個性を主張しながらも、優れたデザインというのが、新生ハスクバーナの特徴でもある。ハスクバーナ自体、もともとがオフロード畑での活躍が印象的であり、このスタイリングは意外だが、走りだせば信頼性のあるプラットフォームをベースにした恩恵が随所に感じられる。

◆ワインディングでは”水を得た魚”状態の軽快さ「ヴィットピレン701」

ヴィットピレンはネオカフェレーサーともいうべき、やや前掲気味のセパハンスタイルが特徴。ストップ&ゴーの多い街中ではそのライディングポジションが最適な設定とは感じられないが、スピードが上昇するにつれ、ハンドルバーへの負担が減ってくる。軽さは正義とは良く言われたものだが、スリムさと相まって、とにかく軽快にマシンを操っていくことが出来る。ワインディングではまさに水を得た魚状態。

適度な鼓動感を感じながら、気持ち良くコーナーをクリアしていく。そのうえで、その気になれば瞬時に立ち上がるパワフルさはシングルスポーツならではのもの。パワーは75馬力と、数値的には驚くものではないが、この軽量さとのマッチングで想像以上にパワフル。不満に感じることなどない。

フロントブレーキシステムはシングルの装備だが、こちらも車体が軽量なこともあって効果的に減速をコントロールすることが可能。倒し込みや切り返しもスパンスパンと鋭く決めることができ、相当なペースでワインディングを駆け抜けることが出来るのだが、スタイリングの印象だろうか。なんとなく上品にスポーツできるといったキャラクターを感じられるマシンとなっている。

◆小回りの利く敏捷性で市街地でも活躍する「スヴァルトピレン701」

対するスヴァルトピレンは、単純にアップライトなポジションに変更しただけでなく、各パーツに専用品をおごるこだわりが窺える。フロントホイールも17インチから18インチに変更。フラットトラックマシンをモチーフにしたとのことだが、イメージとしては既存のフラットトラックマシンとは全く異なる、新たな世界観を作ることに成功している。

もちろんポジションの違いだけでなく、その走りもしっかりとトータルで作りこんでいるのが分かる。フロント周りが軽く、クルクルと小回りの利く敏捷性。アップライトなポジションということもあり、市街地走行ではより実用性に富んだキャラクターとなっている。

エンジンはビッグシングルエンジンにありがちな、極低回転域でのギクシャク感もなく、非常にスムーズな印象。もちろん、根底にはレーシングエンジンのDNAが感じられ、高回転に向けてビュンビュン鋭く吹けあがっていくのが嬉しい意外性なのだが、ポジションによるものだろうか。ヴィットピレンにも増してパワフルな印象すらある。

◆ライディングポジションが違うだけではない!乗り味の個性を感じる2台

正直、ライディングポジションだけの違いだろう程度に考えていたが、乗り味までそれぞれの個性が演出されていた。そして、これはベースとなった690DUKEとも異なるのが興味深いところ。まったり、のんびり走りたい人向きにはややアグレッシブなキャラクターといえるかもしれないが、なるほど、スウェーデン語でヴィットピレンは白い矢。スヴァルトピレンは黒い矢を意味すると聞けば納得でもある。

シングルスポーツの気持ち良さを堪能出来るマシンがめっきり減った昨今ではあるが、長い歴史を振り返ってみても最高傑作の2台(690DUKEも入れれば3台?)と称することが出来るマシンとなっている。

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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