2020年08月14日 06:09

【KTM 1290スーパーデュークR&GT 試乗】ジキルとハイド?似て非なる兄弟モデルの関係性…鈴木大五郎

『1290スーパーデュークR』と『1290スーパーデュークGT』は、基本的に多くのコンポーネンツを共通とした兄弟車であった。

LC8と呼ばれる1301ccのVツインエンジンを、スチール製トレリスフレームに搭載。Rはスポーティなモンスターネイキッドマシン。対するGTはRをベースに、よりツーリングシーンでの快適性を装備したキャラクター。しかし、2020年モデルでRがモデルチェンジを行なったことで、兄弟車でありつつも、互換性のあるパーツの使用率が減ったのである。これにより、両者にどのようなキャラクターの差が生じたのかが興味深いところだ。

◆ビーストというニックネームの割に乗り易い「1290スーパーデュークR」

もともと、ビーストなどという野蛮な?ニックネームを持つRであるが、その驚愕のスペックとは対象的に、非常に乗り易くてフレンドリーというのがその正体でもあった。それまでのスーパーデューク=990時代までが、とにかくスパルタンで乗り手を選ぶマシンだったから余計にそう感じられた面もあるのだけれど、どこに連れ出しても恥ずかしくないほどのオールマイティぶりを発揮する優等生でもあったのだ。

2020年モデルでRは、イメージこそ大きくは変わらないものの、ほぼフルモデルチェンジといった内容で刷新された。とくにフレームは従来比3倍というあまり聞いたことのないブラッシュアップにより高剛性なものに変更され、しなやかさがフレンドリーさの一因となっていたと思われたビーストがまったく異なるキャラクターになっているのでは?といった危惧を感じさせた。

しかし、しっかり取り直した剛性コントロールやリンク式サスペンションの採用等により、剛性感は高めつつも、そのフレンドリーさは不変であった。その上で、ハードに攻め立てた際のライントレースの正確さや、ブレーキングの安定性は格段にポテンシャルアップされている。

エンジンに関しては、出力的には3馬力アップに抑えられてはいるものの(いずれにしても通常では使いきれないほどパワフルなのであるが)細かい改良を積み重ねているところがKTMらしい。4速からでもフロントホイールをリフトさせるほどのパワフルさを持ちつつも、そこまでの過渡特性や、低回転域での扱い易さがより高められており、スポーツ性能を向上させつつも、扱い易さや快適性も高めるという難題をあっさりクリアしていたのだ。

◆対する「1290スーパーデュークGT」がまさに羊の皮を被ったビースト

2015年。スペイン・マヨルカ島にて行われた発表会に参加。ドライ・ウェット・ハーフウェット・そしてまたドライと目まぐるしく変わる路面状況のなかで、驚くほど柔軟なキャラクターを見せつけられた。

それには、ビーストを凌ぐ電子制御の充実具合によるものも大きかった。状況に応じてこまめにライディングモードを変更することで、あるときはジェントルに安定した走りを披露。またあるときはR譲りのスポーツ性能をも見せつける。その変幻自在ぶりに、もうRがいらないのでは?と思ったほどであった。

現行モデルは電子制御のアップグレードにより、もともと完成の域に入っていたエンジンの調教具合がより精密化され、トルクフルかつコントローラブルになった印象だ。しなやかなフレームワークは、対現行Rで考えてみてもまったく劣っているものではない。とくに公道においてはこれが接地感だとかフィードバック性を提供してくれているのも事実で、まるでアドベンチャーマシンを扱っているかのような操作感と乗り心地を提供してくれる。

その上で、電子制御となるサスペンションシステムで、必要以上にピッチングを誘発しない安定感とジェントルさ。ライディングポジションもよりリラックスし、ウィンドプロテクションも悪くない。まさにGTの名に恥じない仕上がりとなっている。

しかし、その気になれば羊の皮を脱いでビーストに負けず劣らずのスポーツ性が顔を出す。あまりストロークを感じさせない安定セットから、姿勢変化を武器としたスポーティな設定まで幅広く対応するのである。

◆実の兄弟から従兄弟くらいの距離感になった「R」と「GT」

基本的に同じフレームワークを用いていた時代であっても、そのキャラクターは異なって感じられた。そして車体周りの構成が大きく異なった今、その方向性の違いはよりハッキリしたともいえる。似ている実の兄弟から、「やっぱりどこか似ているよね〜」という従兄弟くらいの距離感になったようなイメージかもしれない。

しかしその反面、さらに進化した電子制御によってマシンの守備範囲がひろがっていることも事実だ。もともと広い守備範囲が特徴でもある両車のクロスオーバー具合が高まり、双方の走りの領域をカバーしているように感じられるのだ。

スポーツツーリングを軸足としながら、サーキット走行を含むスポーツライディングまで許容するGTか。あるいはスポーツライディングを軸足としつつ、ツーリングシーンまでカバーするRか。

似ているようで、それぞれの個性が興味深い1290スーパーデュークシリーズとなっている。

鈴木大五郎|モーターサイクルジャーナリスト

AMAスーパーバイクや鈴鹿8耐参戦など、レース畑のバックボーンをもつモーターサイクルジャーナリスト。1998年よりテスター業を開始し、これまで数百台に渡るマシンをテスト。現在はBMWモトラッドの公認インストラクターをはじめ、様々なメーカーやイベントでスクールを行なう。スポーツライディングの基礎の習得を目指すBKライディングスクール、ダートトラックの技術をベースにスキルアップを目指すBKスライディングスクールを主宰。

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