【ホンダ ベンリィe:試乗】「現場第一主義」だからこその可能性をみた
ホンダは電動二輪車『ベンリィe:(BENLY e:、ベンリィ・イー)』シリーズを、新聞配達や宅配など法人向けに2020年4月24日、販売開始する。
クルマの免許でも運転できる原付一種(50cc以下)相当を「I」、原付二種(125cc以下)相当を「II」とし、それぞれに大型フロントバスケットやリアキャリア、ナックルバイザー、フットブレーキを標準装備した上級仕様“プロ”を設定した。
つまりラインナップは全4機種。価格は「I」と「II」同じで、BENLY e:が73万7000円、BENLY e:I/II プロが74万8000円、モバイルパワーパック2個、専用充電器2個を含む。
車体はガソリンエンジンを積むベンリィ110/50と共通としているが、ヘッドライトをLED化し、メーターパネルをデジタル化、サイドスタンド戻し忘れ防止機能も追加した。
車体重量はBENLY e:が125kg、プロは130kg。ガソリン車は原付一種が110kg、プロが114kg、110(原付二種)は117kg、プロ120kgとなっているので、最大16kg増しとなっている。
◆実用性を重視した乗り味
試乗すると、ゼロ発進が力強くガソリン車より重いことは帳消しになっていることがわかる。スムーズに加速し、スロットルレスポンスも過不足がない。アクセル操作に対しリニアに速度を上げるが、唐突すぎないし、かといってダルさもない。扱いやすくセッティングされている。
ブレーキはガソリン車同様、機械式ドラムながら前後連動式。プロにはベンリィ110/50プロから受け継ぐフットブレーキペダルが備わり、操作性がとてもいい。車体は落ち着いていて、車体が前後にピッチングするような動きもなく安定志向の乗り味。
なのでどっしり座ったまま右足で減速をコントロールできるのは、有難いとしか言いようがなく、制動時もジワーッと前後ブレーキが効き、車体全体が沈むように減速する。乗り心地の良さを、このフットブレーキがより強調している。
最高出力をガソリン車と比較すると、原付き一種が4.4PSと3.8PS、二種が7.9PSと5.7PSで電動が劣るが、最大トルクは043kg-m/1.3kg-m、0.88kg-m/1.5kg-mと逆転し、その数値を見ると一種で約3倍、二種でも倍近い。
トルク型の出力特性はストップ&ゴーを繰り返す市街地走行で有利。ベンリィ・イー開発責任者の武藤裕輔さん(本田技研工業ものづくりセンター)によれば、ビジネスモデルの車速頻度分布を調べたところ、下記の通りで常用速度域は30km/h以下、最高速度は60km/hとのこと。「ベンリィ・イーはビジネス用途に充分な走行性能を実現しています」という。
■ビジネスバイク車速頻度分布
0〜10km/h:約50%
10〜20km/h:約25%
20〜30km/h:約15%
30〜40km/h:約4%
40〜50km/h:約3%
50〜60km/h:約2%
60〜70km/h:約1%
→必要性能:常用速度域30km/h以下、最高速度60km/h
◆配達業務はバッテリー交換で不安なし
電動二輪車の場合、懸念されるのが航続距離だが、ほぼ決められたルートやエリアでの走行を前提とする企業向けとしたことで不安を解消している。武藤さんによると、ビジネスモデルの半日あたりの走行距離調査結果は平均約20km、最長で約30kmほど。
ベンリィ・イーはWMTCモード50kmを実現し、航続距離においても「実用的です」と武藤さんは言い、さらに「50km走れば、多くのビジネスで1日の配達距離をカバーできます。事務所などで必要に応じてバッテリー交換することで、より多くの要望に応えられるでしょう」と話す。
ベンリィ・イーの郵政仕様車は200台(原付一種50台、原付二種150台)が、20年1月に新宿、日本橋、渋谷、上野の4郵便局ですでに採用済み。首都圏の近距離配達エリアを中心に、さらに2000台の導入が検討されている。郵便配達業務の場合、昼休みにバッテリー交換することもできる。
「ホンダモバイルパワーパック」と名付けられたリチウムイオンバッテリーはシート下に2つ収納され、簡単に脱着可能。残量ゼロから約4時間でフル充電でき、専用充電器はAC100Vまたは200Vコンセントに対応する。バッテリー1つの重さは約10kgあり、車体から遠くにはあまり持ち運びたくない。
ホンダはすでに「PCXエレクトリック」(原付二種相当)も発売し、EVシステムの完成度を日々高めている。直流48Vバッテリーパックを走行時は直列に接続し96V化するのも、PCXエレクトリック譲り。ベンリィ・イーではベクトル制御技術による出力特性を滑らかにし、さらにリバース機能も搭載した。
ハンドル左に追加したリバーススイッチだけでなく、右手にあるスタータースイッチを同時に押しするとモーターが逆回転し、車体がバックする。リバースシステム作動時はメーターに「R」がディスプレイされ、目視でわかる。配達業務で荷物満載時、重宝しそうだ。
また、メンテナンス性を向上するために分割されていたステーターとローターを一体式にし、モーターの着脱をユニットごととできるようにした。ビジネスユース向けに、細部の改良が見られる。
◆5G時代に向け注目したいIoT化
今回、見逃せないのは『Honda FLEETマネージメント』の採用だ。SIMカード入りのTCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)を車体に積み、車両の稼動データや運転記録を収集し解析する。
管理者はリアルタイムにどの車両がどこを走っているのか把握でき、さらに運転者が急加速や急ブレーキなど危険な運転をしていないかなどもわかる。運転業務に日報は付きものだが、それもオートマチック化され、より正確に。
業務エリア内の危険エリアも特定でき、ライダーの安全運転指導などに役立つほか、危険マップを公開し地域社会に貢献することもできる。
このシステムはベンリィ・イーのみならず、ガソリン車のベンリィやスーパーカブ、ジャイロシリーズにも搭載でき、クルマにくらべ遅れをとっているバイクのIoT化、もっと言うならMaaS社会への関わりを強めるきっかけになっていく可能性を秘めていて、たいへん興味深い。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
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